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従業員承継(社内承継)とは?メリット・デメリットから資金調達の手法まで徹底解説

経営者が高齢や体調不良などを理由に、事業の引継ぎや引退を考える際、選択肢は親族承継・従業員承継・M&A(第三者承継)・清算(廃業)の大きく分けて4つに分かれます。

近年の外部環境の急激な変化や先行き不透明感もあり、親族内承継の割合は減少し、より従業員承継や第三者承継の選択肢が広まっています。

本記事では、役員・従業員への事業承継に関する特徴やメリットデメリット、実務における流れ、ポイントについて解説していきます。

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従業員承継とは?注目される背景と親族内承継・M&Aとの違い

従業員承継とは、会社の経営を社内の従業員、特に中核を担う幹部社員などに引き継ぐ事業承継の方法です。

経営者の親族や外部の買い手ではなく、日ごろから会社をよく理解している社内の人材にバトンを渡すという点が大きな特徴です。

後継者としては、たとえば専務や部長、長年会社を支えてきたベテラン社員などが候補になるケースが多く、既に現場を熟知している安心感や社内外の信頼関係の継続がメリットとして挙げられます。

従業員承継が選ばれる理由と背景

ここ数年で従業員承継が注目されている背景には、いくつかの社会的要因があります。

親族内承継の減少

かつて主流だった親族への承継ですが、後継ぎとなる子どもが他の職業を選んだり、そもそも継ぐ意思がないというケースが増えています。

帝国データバンクの調査によると、代表者への就任経緯として2023年度時点は同族承継の割合が36%と最も高い割合でしたが、2024年度では内部昇格(従業員承継)の割合が高くなっております。

M&Aへの心理的抵抗感

外部に会社を売却するM&Aは、売却先の企業文化が合うかどうか、従業員の雇用が守られるかなど、不確実性が高いと感じる経営者も多いです。

特にここ最近、不適切な買手企業によるM&A後のトラブルのニュースが話題となり、より一層ネガティブなイメージを持つ方が増えている印象です。

社内の信頼関係を生かせる

日頃から一緒に働いている従業員だからこそ、経営者としてのバトンを渡しやすい、という心理的なハードルの低さがあります。

中小企業においても内部登用の実例が増え、有力な人材さえいれば、最も理想形の承継方法と考えている経営者が多いと思います。

一方で、後継者候補が経営者としてのスキルを十分に備えているか、株式の取得や保証人の問題をどう解決するかといった課題もあります。

このような特性を踏まえ、従業員承継は“中長期的な準備が必須”の選択肢であることを理解しておく必要があります。

【比較表】親族内承継・M&A(第三者承継)との違い

各承継手法の特徴を比較すると以下のようになります。
企業風土の維持や雇用の継続において、従業員承継は非常に優れています。

項目従業員承継親族内承継M&A(第三者承継)清算・廃業
会社の成長〇(後継者次第)△(後継者次第)
企業風土・文化
雇用条件一定一定〇(良化の可能性あり)✖(解雇)
時間軸人選・育成に一定期間を要する社内への融和・育成に期間を要する相手探しに時間を要するが、決まれば早い任意のタイミングで決断可能
オーナーの利潤

従業員承継のメリットとデメリット

ここでは、従業員承継の代表的なメリットとデメリットを整理してみましょう。

メリット

従業員承継には、他の承継方法にはない多くのメリットがあります。

企業文化やノウハウを承継しやすい

長年社内で働いてきた従業員が後継者となるため、経営方針や現場の価値観が共有されており、企業文化の断絶が起きにくいという利点があります。

これにより、社員や取引先からの信頼も継続しやすく、引継ぎ後も業務が安定しやすくなります。

社員や取引先に安心感を与えやすい

内部の人物が後継者となることで、社内の混乱や退職リスクを抑えることができます。

「この人なら任せられる」という安心感があり、対外的な信用不安も少ないのが特徴です。

外部への情報漏洩リスクが低い

M&Aなどのように第三者が関与しないため、売却交渉の過程で機密情報が外部に漏れるリスクがほとんどありません。

スムーズな意思決定・移行が可能

社内事情に精通しているため、経営判断や業務フローの理解が早く、新体制の立ち上がりも早い傾向があります。

デメリット

理想的な承継方法に見える従業員承継ですが、実務上はいくつかの高いハードルが存在します。

経営者としての資質にばらつきがある

現場には強くても、経営全体を見渡す視点やリーダーシップが必ずしも備わっているとは限りません。マネジメントや財務に関する教育やサポートが不可欠です。

社内で後継者を探したいと思っていても、そもそも適任者がいない、あるいは本人に継ぐ意志がない、後継者が親族からの反対にあうというケースも少なくありません。

株式取得や資金面のハードル

中小企業では株式の多くを現経営者が保有しているケースが多く、後継者がその株式を取得するには多額の資金が必要となる場合があります。

また、金融機関との保証人変更もスムーズにいかないことがあります。

人間関係、社内バランスの変化

同僚や先輩後輩の関係性があった中で、突然会社のトップになると、社内での力関係や感情の摩擦が生まれる可能性があります。

周囲との関係性を気にするあまり、前経営者の考えを踏襲しすぎて大きな変化が生まれず、結果会社の成長を阻む可能性もあります。周囲の理解とフォロー体制の構築がとても重要な要素となります。

従業員承継における最大の壁「資金調達」を解決するスキーム

先述した株式買取資金の問題を解決するためには、専門的な金融スキームを活用する必要があります。

代表的な手法をご紹介します。

MBO(マネジメント・バイアウト)/ EBO(エンプロイー・バイアウト)の活用

MBO(経営陣買収)やEBO(従業員買収)は、後継者となる役員や従業員が、金融機関などから資金を調達して現経営者から株式を買い取る手法です。
これにより、所有(株式)と経営を一体化させることができます。

SPC(特別目的会社)を通じた金融機関からの融資

MBO/EBOでよく使われる具体的な仕組みが、SPC(特別目的会社)の設立です。

①後継者が少額の自己資金でSPC(受け皿会社)を設立する。
②SPC名義で金融機関から「株式買収資金」の融資を受ける。
③その資金を使って、現経営者から対象会社の株式を買い取る。

最終的に対象会社とSPCを合併させ、対象会社の利益から借入金を返済していく。
この手法により、後継者個人の資金力を大きく超える株式の買取が可能になります。

ファンド(投資会社)の活用

金融機関からの融資だけでは資金が足りない場合や、リスクを分散したい場合は、事業承継ファンドなどの外部投資会社から出資を仰ぐことも選択肢の一つです。
ファンドの経営支援を受けながら企業価値を高め、将来的に後継者がファンドから株式を買い戻すといった座組みも可能です。

種類株式や従業員持株会の活用による資金負担の軽減

株式をすべて買い取るのではなく、議決権を持たない「無議決権株式」や、配当を優先する「属人的株式」など、種類株式を活用することで、後継者が取得すべき株式数を減らし、資金負担を軽くすることができます。
また、従業員持株会を組成し、広く従業員から資金を集めて株式を受け皿にする方法もあります。

従業員承継の流れと手順

従業員承継を円滑に進めるためには、段階的かつ計画的な準備が不可欠です。

ここでは、従業員承継の一般的な流れを4つのステップに分けてご紹介します。

後継者候補の選定と意思確認

まず、社内から後継者候補を選定します。

この段階で重要なのは、「人望」「業務理解」「将来性」といったバランスを勘案し、適した人材を見極めることです。

複数の候補者から選択できることが大きなメリットであるため、最初から絞り込む必要はありません。

【ポイント】

  • 幹部社員や長年勤務している信頼できる人物が対象となることが多い
  • 役職上の立場だけでなく、社内外の信頼を得られる資質も重要
  • 本人に継ぐ意思があるか、家庭の理解が得られるかも確認が必要

事業承継計画の策定と後継者育成

候補者を決定したら、経営者としてのマインドとスキルの習得に向けた育成が始まります。

数年にかけて必要なフェーズであり、じっくりと基盤を気づいていくことが重要となります。

その際には、承継時期や財務・税務対策などを記した事業承継計画書を策定することをお勧めします。

具体的に動き出す方針になるだけでなく、後継者以外の社内キーマンへの説明や透明性の担保となります。

【実施されることの例】

  • 経営会議への参加、業績管理や資金繰りについての知識の習得
  • 取引先や金融機関との同席による信頼関係の構築
  • 役職上の権限委譲を徐々に進めていくこと

企業価値(株価)の算定とスキーム構築・資金調達

育成が進み後継者として見据えることができたタイミングで、実際の承継に向けたスキーム設計を行います。

ここでは、株式の移転や保証人の引継ぎなど、法律・税務・金融面での専門的な判断が求められます。

各専門家にアドバイスを仰ぐことも重要です。

【実務上の検討事項】

  • 株式の譲渡・贈与のタイミングと方法
  • 後継者の資金調達
  • 金融機関との保証契約の移行(個人保証の解除含む)
  • 顧問税理士、弁護士、金融機関と連携して設計

社内外への告知・代表者の交代手続き

承継スキームの準備が整ったら、正式に経営のバトンタッチが始まります。

この段階から、社内外に向けた発信を行います。全員に対して、同じタイミングで行うのではなく、特に重要な社員・取引先に対しては事前に説明を行うことも検討する必要があります。

【実施されること】

  • 社員説明会での経営交代の発表
  • 取引先や金融機関への挨拶、表敬訪問
  • ホームページやプレスリリースでの周知

従業員承継には明確なステップと、それぞれに対応すべき実務が存在します。

ある日突然に経営者が変わるのではなく、中長期的に準備していくプロセスそのものが、承継成功の鍵になります。

従業員承継で活用できる税制と補助金

従業員承継を行う際、国が用意している支援制度を賢く活用することで、資金面でのハードルを下げることができます。

法人版事業承継税制(特例措置)の活用

「事業承継税制」は、親族内承継だけでなく従業員承継でも利用可能です。
一定の要件を満たし、都道府県知事の認定を受けることで、後継者が株式を贈与・相続で取得する際の贈与税・相続税の納税が「全額猶予(実質ゼロ)」になる強力な制度です。(※適用期限があるため早めの準備が必要です)

事業承継・引継ぎ補助金の活用

事業承継を契機として新しい取り組み(設備投資や販路開拓)を行う場合や、M&A・事業承継にかかる専門家への委託費用(アドバイザリー費用やデューデリジェンス費用など)の一部を補助してくれる制度があります。
活用できるか専門家に相談してみましょう。

まとめ

事業承継は、会社の「終わり」決める話ではなく、「次のステージ」へと進めるための経営戦略の一つです。

特に従業員承継は、企業文化を守りながら、社内外の信頼を活かして事業を継続させることができるという点で、中小企業にとって非常に現実的で有力な選択肢となり得ます。

持続可能な企業の未来を創る承継手法として、いかなる選択肢が最適かは各企業によって異なります。

他の承継方法と比較しながら柔軟に判断する姿勢も非常に大切になります。

また、事業承継を行う際には専門家に相談しながら、どの方法が最も良い選択肢なのかを検討していく必要があります。弊社リガーレでは、M&A・事業承継から相続と幅広い支援実績がございます。

事業承継に関するお悩みや疑問をお持ちの方は、是非当社まで気軽にお問い合わせ・ご相談下さい。

この記事の執筆

アドバイザー中川雄太

専門領域:M&Aアドバイザリー

経営者の後継者問題や企業の成長戦略を支援するM&Aアドバイザーという職種に魅力を感じ、大手M&A仲介ブティックに入社。主に中堅中小企業オーナーに対するアドバイザリー業務に従事し、建設業や卸売業など様々な業種において計10件以上のM&A成約支援に携わる。M&Aのみに留まらず幅広く事業承継支援を行いたいという想いからリガーレに入社。M&A・事業承継を通じて企業の永続的な発展を支援する。

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