従業員、取引先、会社の幸せ。
未来を守るための伴走。
プロジェクトの概要
株式会社共栄プラスチック
1941年文具・事務用品の製造・販売で創業。創業者は今回インタビューを受けていただいた元代表取締役社長、田代様の奥様の父。2009年に田代様が4代目社長として経営を継承。それ以前2期赤字決算のため急遽就任。その後、業績の立て直しを行いながら、2020年に同業種の大手企業に事業承継型M&Aによる資本提携という形で事業を承継する。
Client
元代表取締役社長
田代 孝之郎
Partner
株式会社リガーレ
代表取締役
/税理士・コンサルタント
松本 綾
株式会社リガーレ
取締役COO
/税理士・コンサルタント
香取 圭
事業承継・M&Aの背景
未来を見据え、中期経営計画の策定へ。
香取:事業承継にM&Aによる企業売却を選択されたわわけですが、きっかけはどのような流れだったのでしょうか?
田代様:そもそも私自身が社長を引き継いだのが65歳でした。もう経営のスタート時点で事業承継を意識せざるを得ませんでしたね。そのうえで、子どもにはそれぞれの仕事があり、経営を引継ぐ意志はなく割と早い時期からM&Aを意識していましたよ。
銀行さんが開催するM&A含む事業承継の知識セミナーに参加して、専門家の方にいろいろ教えてもらっていました。
松本:もう10年以上前になりますが、田代様が経営を引き継がれたタイミングで、御堂筋税理士法人が月次の税務監査を含め、幹部社員教育のため毎月お伺いするようになりました。事業承継を見据えつつ、人事制度も一緒に勉強会からスタートして、様々な仕組みづくりを行っていきましたね。
田代様:事業承継も重要ですが、そもそも中小企業として改革していかなければいけないことが多かったので、細かなことから制度改革までたくさんの取り組みをしながら、業績向上を目指していきました。中期経営計画の策定は、幹部社員も参画し進めていった重要な取り組みだったと思っています。
松本:もともと創業は奥様のお父様ということですが、株を相続されていた奥様とは事業承継については、どのようにお話されていたのですか?
田代様:妻は従業員と仕入れ先のことを一番に考えていましたね。私も株を売ってお金を得たいというようなことは頭になく、会社の未来を守ることに全面的に同意しました。創業者である義父もそれが一番の望みだろうと感じました。
松本:社長の想いを受けて株式の集約をすすめ、会社を守っていけるように準備をされていきましたね。
田代様:将来に向けてそういった課題を整理している最中にも、金融機関からは、後継者について質問されることも多く、某メガバンクから具体的にM&Aを進めるための提案を受けたんですよ。それが具体的に動き出すきっかけになったということですね。
事業承継・M&Aの課題
大切にしたかったことは、従業員と仕入れ先をきちんと守るということ。
田代様:松本さんからもM&Aについては、以前から情報提供をいただいていましたので、やっぱり会社の事情をしっかり把握してもらっている御堂筋税理士法人にお願いするのがいいと判断しました。
香取:それが2018年の夏頃ですね、弊社と専任でアドバイザリー契約を結ぶことになり、約1年半で無事にM&Aによる事業承継をサポートすることができました。
まずは「引受先は同業種で」というご希望を念頭に20社ほどリストをつくらせていただきました。その中から、田代さんにOK・NGを選別していただいて、5社ほどに絞っていきました。
田代様:やはり従業員と仕入れ先を守っていく、ということを考えると同じ業界であるほうがいい。同じ業界を発展させていく想いをもっていて、自分たちの会社・従業員・技術・取引先を大切にしてほしいという基準がありまっした。そこに元々お取引先でもあった、引受先となる企業が候補先としてあって、ここを一番の希望ということをお伝えしました。
課題に対する解決策の提案
ネットワークを活かし、第一期希望の引受先へ直接アプローチ。
香取:そのご希望を伺って、私のほうでネットワークにアプローチすると、サクラクレパスさんのキーマンとなる方に繋がることができたので、ネットワークの方を通じてM&Aの打診を行いました。
田代様:全く同じことをしている会社というよりも、お互いの強みでシナジー効果を生み出してくれそうな会社ということを考えていました。引受先企業との交渉がうまくいけば願っていた事業承継ができると、交渉の道筋をつくってもらえたことはとても有難かったです。
松本:数回のトップ面談、デューデリジェンスにも立ち合いをしながら、基本的な進行は順調に進んでいきました。希望通りの事業承継となり、こちらとしても非常にうれしい成果を得ることができました。
香取:従業員・取引先を守り、会社をきちんと存続させるための選択を、強い信念をもってすすめられていましたね。創業者であるお義父様が使われていたカバンを持って、最後の株式譲渡契約の調印式に望まれていた姿は、非常に感銘を受けました。
事業承継・M&Aのその後(PMI)
段階的に経営を引き継ぎ、取引先・従業員にも安心を。
田代様:企業売却の際に条件をすり合わせていると、経営の引き継ぎ、事業自体の遂行をするうえでも代表取締役として残ってほしいという要望をいただきました。自分自身は引退するつもりだったので、少々悩みましたよ。結果的に、取締役社長として1年、もう1年は顧問として、2年間で経営の引き継ぎを行っていくことで合意しました。
香取:条件とはいえ代表権がなくなり、取締役社長として仕事をすることになりましたが、社内での行動で配慮されたことはありましたか?
田代様:資本提携であることを、従業員や仕入れ先にも伝えることで安心感を与えると思いましたし、そのために私自身もM&A以前と同じ態度で従事するように心がけていました。これまでと変わらず、経営の部分で伝えるべきことは、引受先の企業にも経営陣にもしっかりと伝えていたと思います。
香取:もともと考えておられた会社としてのシナジー効果という部分ではどうでしたか?
田代様:M&Aのタイミングが良くも悪くもコロナ禍で、卓上の飛沫防止のパネルが売上に大きく貢献したというのがひとつありました。それ以外の商品でも引受先企業の販路を活用していけるだろうということは今後も期待が大きいです。
アジア進出といったことも、これからお互いの強みの理解を深めていけば、十分事業拡大につなげていけると思います。
アフタートーク
最終的にM&Aという形での事業承継を選択。
タイミングも含めて早い段階で決断ができた理由。
松本:後継者問題、事業承継というのは日本全体の社会課題のひとつでもあるのですが、なかなか手段も時期も決断しきれずにズルズルと先延ばしになっているお会社も多くあります。田代様はどのように決断されたのですか?
田代様:結局は「この会社、自分の会社をどうしたいのか?」ということが明確であることが大事だと思うんです。会社を伸ばしていきたい、親から引き継いだ思いを残していきたい、あるいはやめてしまいたい、それぞれの事情と感情があると思います。
松本:M&Aという選択肢を考える経営者の中には、従業員から「オーナー経営者が組織をみはなすのか?」というようなことを思われるのではないかという不安を持たれる方もいらっしゃいます。
田代様:それは確かにあるかもしれません。でも、そういった意見や想いもちゃんと受け止めて、自分の年齢から継続は難しい点、会社の未来や社員の将来、仕入先の将来を考えてのことであることをきちんと納得してもらえるように努めないといけないですね。
香取:事業承継も終えられて、経営の引き継ぎも終えられて、仕事からある意味解放されたわけですが、日々の時間の使い方に変化はありますか?
田代様:時間もできいろいろな本を読んでいますよ。歴史から学んで、今世界で起きている時事問題がなぜ起きているのかなど考えて、もっともっと知らなきゃいけないなという好奇心が強くなっています。生活のリズムは変わりましたが、楽しく過ごしています。