会社売却にはどのような税金がかかるの? 最新の計算方法や税金対策を税理士が徹底解説

会社売却にはどのような税金がかかるの? 最新の計算方法や税金対策を税理士が徹底解説

会社売却には税金がかかります。

その税金の種類は、売却手法や属性(法人or個人)によっても異なります。

ここでは、会社売却時に係る税金の種類やその対策、注意点について解説します。

手法別に見る会社売却にかかる税金の種類と所得について

まずは会社売却にかかる税金の種類と所得について手法別に解説します。

株式譲渡(個人株主の場合)

譲渡益に対する税率区分は一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)で、その税率は20%(所得税15%、住民税5%)となります。

課税方式は申告分離課税であり、他の所得とは区別して計算されます。
平成25年から令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1パーセントを乗じた額を所得税と併せて申告・納付することになります。

会社を残して事業譲渡を行う場合や、廃業をして清算する場合等に比べ、税率を低く抑えられるため、税制面のメリットからも株式譲渡が国内M&Aにおいて用いられる最もポピュラーな手法であるということが理解できます。

株式譲渡(法人株主の場合)

譲渡益に対する税率区分は法人税で、その税率は企業の区分によって異なります。
課税方式は総合課税で、当該事業年度の所得金額(課税所得)に合算され計算されます。

法人税等の実効税率は約35%となります。
詳しくは国税庁のHPをご参照ください。

事業譲渡(個人事業主の場合)

譲渡益に対する税率区分は所得税、その税率は分離課税に対するもの等を除くと、5%~45%の7段階に区分されています。

詳しくは国税庁のHPをご参照ください(住民税については別途課税されます)。

譲渡所得への課税方式は譲渡資産の種類に応じて次のように区分して課税されます。

譲渡資産の種類課税方法
土地(借地権等の土地の上に存する権利を含む)および建物分離課税(土地建物等)
株式等短期所有土地の譲渡の類似するもの分離課税(土地建物等)
ゴルフ会員権の譲渡に類似するもの総合課税
上位以外の株式等に係る譲渡分離課税(株式等)
上場カバードワラント分離課税(先物取引等)
店頭カバードワラント
その他の資産総合課税




また、課税事業者が事業用の資産を譲渡した場合は、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡となるので、消費税が課税される点に注意が必要です(土地や借地権の譲渡は、消費税等は非課税であり課税されません)。

事業譲渡(法人の場合)

譲渡益に対する税率区分は法人税で、その税率は企業の区分によって異なります。
課税方式は総合課税で、当該事業年度の所得金額(課税所得)に合算され計算されます。

法人税等の実効税率は約35%となります。
詳しくは国税庁のHPをご参照ください。

また個人の場合同様、課税事業者が事業用の資産を譲渡した場合は消費税が課税される点に注意が必要です。

会社売却時に役立つ税金対策

続いて、会社売却時に役立つ税金対策を3つご紹介します。

役員退職慰労金の活用

一定の金額までは、株式譲渡による所得税率よりも、退職金による所得税率のほうが低く抑えられる場合が多くあります。

その場合は、譲渡総額の一部を、役員退職慰労金として受け取ることにより、最終的な実効税率を軽減できる可能性があります。

税理士やM&A専門家に事前に相談のうえ、役員退職慰労金を活用のうえ手残り額が最大となるような組み合わせを理解しておきましょう。

会社分割の活用/不要な資産の移転

会社分割等の活用により、不要な資産(非事業用資産)を切り離し譲渡対象外とすることにより、譲渡総額を抑えることができます。

例えば、非事業用の収益不動産(賃貸マンション等)や投資目的の金融資産(株、保険、オペレーションリース等)等がこれに該当します。

それらを事前に切り離しておくことにより、買手にとっても必要な資産のみを適切な価額で譲受できることにもなることから、お互いメリットを得ることができます。

非事業用資産をお持ちの会社は、事前に税理士やM&A専門家に相談のうえ、適切なスキームの構築を依頼するとよいでしょう。

第三者割当増資の活用

第三者割当増資を活用することにより特定の第三者へ議決権の付与(経営権の移譲)をすることができます。

この場合は、自身の持つ株式はそのままで売却益は発生しませんから、税金がかかることもありません。(ただし、割当増資については、適正な金額の算出が必要となります。)

一方で、特定の第三者との有効な関係が前提となりますので、割当てる先については慎重に検討する必要があるほか、自身も引き続き株主として会社の経営に関わっていくことになるため、完全リタイアをしたい売手には向きません。

役員退職慰労金を活用する際の注意点

会社売却時に使われる税金対策として、最も使いやすいのが役員退職慰労金の活用ですが、無制限に活用できるわけではありません。

ここでは、その際の注意点について解説します。

適正な額の範囲内であるか

役員退職慰労金のうち、不相当に高額な部分は損金の額に算入されません。

不相当に高額かどうかは、以下の要素(法人税法施行令第70条第2号)に照らして総合的に判断するものとされています。

  1. 当該役員のその内国法人の業務に従事した期間
  2. その退職の事情
  3. その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給状況等

一方で、具体的な算出方法は特段定められていませんが、役員退職金の適正な額を算定するにあたり、実務上最も活用されるのが「功績倍率法」であり、以下の計算式で示されます。

最終報酬月額×勤続年数×功績倍率

過去の判例では、最終報酬月額を極端に増額した、または功績倍率が極端に大きい場合に不相当に高額とされたものがある一方で、勤続年数について争われたケースはほとんどありません。

不相当に高額と指摘されないためにも、役員報酬額を計画的に設計し、国が示した功績倍率に沿って計算することが重要です(実際には過去の判例において国が示した「社長3.0、専務2.4、常務2.2、取締役1.8、監査役1.6」を採用するケースが多くなっています)。

不相当に高額と認定された場合、その部分は損金の額に算入できず、法人税の負担が重くなるばかりか加算税を課せられることもありますので、譲渡対価の一部を役員退職慰労金で受け取る場合には、事前に税理士等へ相談のうえ、適正な金額を設定するようにしましょう。

退職の事実があるか

役員退職慰労金を受け取ったあとも、引き続き会社経営の重要な地位に就いている場合等、「役員の退職した事実」が認められなかった場合、役員退職慰労金は認められず、役員賞与として取り扱われることになります。

役員賞与扱いとなることにより、会社としては、退職金として損金に算入することができなくなるほか、役員個人においても退職所得ではなく給与所得として再度所得金額の計算を行うことになるので、支払うべき税金(所得税及び住民税)が増加してしまいます。
退職の事実には、役員の任期満了による退任、辞任や死亡等の事実だけでなく、次のように分掌変更によって役員としての地位や職務の内容が激変して、実質的に退職したと同様の事情にある場合にも認められます。

  1. 常勤役員が非常勤役員になった場合
    ただし、常勤していなくても代表権があったり、実質的にその法人の経営上主要な地位にある場合は除かれます。
  2. 取締役が監査役になった場合
    ただし、監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めている場合や、使用人兼務役員として認められない大株主である場合は除かれます。
  3. 分掌変更の後の役員の給与がおおむね50%以上減少した場合
    ただし、分掌変更の後においても、その法人の経営上主要な地位を占めていると認められる場合は除かれます。
    このように適正な額の範囲であっても退職の事実が認められなかった場合、役員退職慰労金として否認される恐れがありますので、退任後の職務内容や報酬等については慎重に検討する必要があります。

その他会社売却時における税金の注意点

役員退職慰労金の取扱い以外にも会社売却時に注意すべき点がいくつかございますので解説します。

確定申告/納税のタイミング

個人の株主においては、その年の1/1~12/31までに得た所得を、翌年の2/16~3/15の期間に確定申告を行ったうえで税金を納めることになります。

例えば、その年の年初(例えば1月や2月)に会社を売却した場合は、翌年の確定申告後の納付まで1年以上期間が空くことになってしまいます。

よって、クロージング時に受け取った譲渡代金は使い切ることなく、流動性の高い資産で保有しておくことをおすすめします。

取得費について

譲渡した株式等が相続したものであるとか、購入した時期が古い等のため取得費が分からない場合には、同一銘柄の株式等ごとに、取得費の額を売買代金の5%相当額とすることが認められています。

これは実際の取得費が売買代金の5%相当額を下回る場合にも、同様に認められます。

例えば、100%株式譲渡価額が30億円で、取得費=自分が払い込んだ資本金が10百万円の時、実際の取得費で計算した場合の取得費は10百万円ですが、売買代金の5%相当額とした場合の取得費は15百万円となり、費用計上できる金額が増加します。
このように株式譲渡価額が高額になる場合等においては売買代金の5%を取得費とする方が、実際の取得費を用いて計算するよりも手残り額が多くなる可能性があるので、事前に確認するようにしましょう。

まとめ

このように、会社売却に係る税金には様々な種類や対策、注意点があり、それらを理解するには専門的な知識を必要とします。

会社売却と税金は切り離せない関係にあり、税金のことを理解したうえで、安心して会社売却を進めるためにも、御堂筋税理士法人グループである株式会社リガーレのような税務に精通したM&A専門家を起用することをおすすめします。

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