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警備業界の売却相場は? M&A成功事例から学ぶ「警備員流出リスク」を防ぐ交渉術

電気通信工事の需要は近年高まっており、M&A件数も増加傾向にあります。
この記事では、電気通信工事業界のM&A動向や実施するメリット、具体的なM&A事例などを紹介します。
目次
まずは、電気通信工事業界の定義や特徴について解説します。
電気通信工事業界は、大きく「電気工事」と「通信工事」の2つの領域で構成されています。
電気工事は、建物や施設に電力を供給するためのインフラ整備全般を担う分野です。発電所や変電所から電柱までをつなぐ送配電設備の構築、ビル・工場・住宅など建物内部の電気配線や照明・空調の電源設備の施工、さらに鉄道の運行に不可欠な電気設備の新設・改修など、幅広い領域にわたります。
通信工事は、電話・インターネット・テレビなどの情報通信サービスを利用可能にするためのインフラ構築を行う分野です。光ファイバーケーブルの敷設、携帯電話基地局の設置、企業のネットワーク環境の構築、データセンターの電気・通信設備の施工などが含まれます。
これらを総称して「電気通信工事」と呼び、現代社会の電力と情報通信という2つの基盤を支える重要な産業分野です。
電気工事は、工事が行われる場所や対象設備によっていくつかの分野に分かれます。それぞれ求められる技術や許認可が異なり、参入する事業者の顔ぶれも違います。
| 分野 | 対象範囲 | 具体的な施工内容の例 |
| 送配電設備工事 | 発電所・変電所から需要家に至るまでの送電・配電に関わる屋外設備 | 送電線の架設・張替え、変電所内の機器据付、配電用電柱の建柱・建替え、変圧器の取付け等 |
| 建築電気設備工事 | オフィスビル・商業施設・工場・住宅など建物内部の電気設備全般 | 建物への電力引込み、屋内配線・分電盤の設置、照明器具の取付け、受変電設備の施工等 |
| 鉄道電気工事 | 鉄道の安全運行に必要な線路上・駅構内の電気設備 | 架線の張替え・保守、信号保安装置の設置、駅舎の照明・電力設備の改修、変電所の整備等 |
| その他の電気工事 | 道路・トンネル・公共空間等の電気設備 | 道路照明・トンネル内照明の設置、交通信号機の電気工事、ネオンサイン工事等 |
(リガーレ作成)
このうち、送配電設備工事や鉄道電気工事は高い専門性が求められ、電力会社やJRグループなど発注元と資本関係を持つ企業が中心的な担い手となっています。一方、建築電気設備工事は需要の裾野が広く、全国各地の中小事業者が数多く活動している領域です。日本電設工業協会の統計によれば、会員企業の受注高に占める建築電気設備工事の比率はおよそ7割に達しており、電気工事業界の中核市場と言えます。
電気通信工事の発注には、建設プロジェクト全体をゼネコンなどが一括して請け負い、その中で電気通信工事を下請けに回す方式と、発注者(施主)が電気通信工事だけを切り出して専門業者に直接発注する方式の、2つの形態があります。
官公庁の工事では、コストの透明性確保や競争促進の観点から、工種別に分けて発注する方式が多く採用されています。これに対して民間の工事では、施主側の管理負担を減らせるため、ゼネコンへの一括発注が主流です。この場合、電気通信工事業者はゼネコンの下請けとして工事に参加することになります。
電気通信工事業界には、元請けから下請け、さらに孫請けへと仕事が流れる重層的な構造が存在します。中間に入る業者が増えるほど、実際に現場で施工する事業者の収益は圧迫されやすくなります。業界全体として外注費の比率が高い傾向にあるのも、こうした構造に起因しています。
通信工事業界は、電気通信事業者(キャリア)の設備投資計画に業績が大きく左右される構造を持っています。とりわけNTTグループは、旧電電公社時代から引き継いだ全国規模の通信インフラを保有しており、その維持・更新工事だけでも莫大な発注量があります。通信工事大手の売上に占めるNTT関連の比率は高く、NTTの投資方針の変化が業界全体に波及する構造です。
国土交通省の統計によると、電気工事の完成工事高は近年10兆円を超える規模で推移しており、設備工事業全体の中で最大のセグメントとなっています。通信工事の完成工事高も3兆円台と堅調です。
通信工事分野では、2019年頃から5G基地局の整備が本格化し、あわせてGIGAスクール構想(全国の学校に高速ネットワーク環境を整備する国の事業)や光ファイバー網の拡充といった需要が重なり、活発な投資が続きました。しかし、5G基地局の人口カバー率が高水準に達したことで、モバイル向け設備投資はピークを過ぎつつあります。
一方、今後の成長分野としては、生成AIの急速な普及を背景としたデータセンターの建設ラッシュ、防災・減災の観点から進む無電柱化事業、NTTが推進する次世代光通信基盤「IOWN」の構築、さらに再生可能エネルギー関連の電気設備工事などが注目されています。
次に、電気通信工事業界の課題について解説します。
建設業界全体に共通する課題ですが、電気通信工事の現場でも人手不足は深刻さを増しています。帝国データバンクの調査によると、建設業界の後継者不在率は全業界中で最も高い水準にあります。
電気工事士をはじめとする技術者の高齢化が進む一方、若手の入職率は低く、養成施設も減少傾向にあります。長時間労働や休日の少なさといった業界イメージが若年層の参入を妨げている面もあり、ベテラン技術者の引退とともに貴重なノウハウが失われるリスクも高まっています。
人材確保が困難な状況が続けば事業の継続自体が危ぶまれるケースも出てきます。こうした背景が、M&Aによるグループ化や事業承継の動機のひとつとなっています。
電気通信工事業界に根強く存在する多重下請け構造は、末端の施工業者ほど利益率が低下しやすいという問題を抱えています。元請けから複数の中間業者を経由して工事が発注されるため、最終的に現場で作業を行う事業者に支払われる対価が、本来の業務量に見合わないケースが生じています。
この構造を改善するためには、元請けとしての受注力を高めるか、規模の拡大によって交渉力を強化する必要があり、M&Aはその有効な手段のひとつです。
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が全面適用されました。従来のように長時間稼働で工期をこなす働き方が許容されなくなったことで、限られた時間内で生産性を上げる体制づくりが急務となっています。
労働時間の短縮は、従業員の処遇改善につながる一方、施工能力の低下や人件費の増加を招く可能性もあります。特に小規模事業者にとっては、こうした規制対応を単独で乗り切ることが難しく、M&Aにより経営基盤の強い企業グループに参画することで対応力を高めるという選択肢が注目されています。
電気通信工事業界では、市場環境の変化や構造的な課題を背景に、近年M&Aが活発化しています。主な傾向は以下の通りです。
通信工事大手は、キャリアの設備投資サイクルに業績が連動するリスクを低減するため、通信以外の事業領域への拡大を進めています。建築土木、ITソリューション、再生可能エネルギーなど、隣接する領域の企業をM&Aで取り込み、収益基盤を分散させる動きが顕著です。
例えば、ミライト・ワンは建設会社や測量会社を子会社化し、通信設備工事の会社から「スマートゼネコン」への転換を掲げています。コムシスホールディングスもITソリューション事業や社会インフラ事業を成長領域と位置づけ、M&Aを含めた事業拡大を進めています。
電気工事と管工事、空調設備工事など、建物の設備工事を担う事業者同士のM&Aも増加しています。設備工事は互いに技術的な親和性が高く、統合によって顧客に対するワンストップサービスの提供が可能になります。受注範囲を広げることで、施主やゼネコンからの評価が高まり、元請けとしての競争力強化にもつながります。
前述の通り、業界全体で技術者の確保が困難になっています。大手企業は採用力を活かして人材を囲い込む一方、知名度で劣る中小企業では十分な採用ができず、経営に支障をきたすケースが増えています。
売り手側にとっては、後継者不在を理由とした事業売却が多く、買い手側にとっては有資格者を含む人材と既存顧客基盤をまとめて取得できるという双方のニーズが合致しやすい業界です。また、大手グループに入ることで採用ブランドの向上や労働環境の改善も期待でき、従業員にとってもメリットが生まれます。
電気通信工事業界におけるM&Aを活用した場合の主なメリットは以下の通りです。
親族・役員・従業員に適任の後継者がいない場合でも、M&Aにより第三者へ事業を引き継ぐことができます。会社の存続と取引先との関係維持が可能になります。
廃業を選べば従業員は職を失いますが、M&Aであれば雇用条件を維持したまま事業を承継できます。長年貢献してきた従業員の生活を守れることは、経営者にとって大きな安心材料です。
中小企業の経営者は金融機関への個人保証を負っているケースが多くあります。M&Aにより株式を譲渡すれば、買い手企業が保証を引き継ぐため、売り手オーナーは個人保証から解放されます。
M&Aでの譲渡価格は、親族承継や社内承継と比べて高くなるのが一般的です。長年の経営努力に見合った正当な対価を得ることができます。
大手グループの傘下に入ることで、買い手企業のブランド力、資金力、採用力、技術力などを活用でき、単独では実現が難しかった経営の安定化や事業拡大が可能になります。
新しいエリアに進出するには、市場調査・拠点開設・人材確保・行政手続きなど多大な時間とコストがかかります。M&Aであれば、既存の営業拠点、地元の顧客基盤、許認可をまとめて取得でき、短期間での市場参入が可能です。
電気工事士や施工管理技士などの有資格者を含む人材、施工車両や工具類、過去の工事実績に裏付けられた技術ノウハウなどを、一括で取得できることはM&Aの最大の利点です。特に人材難が深刻な業界において、その価値は非常に大きいと言えます。
電気工事、通信工事、管工事、空調工事など隣接分野の企業を取り込むことで、顧客に対してより幅広いサービスを提供できるようになります。外注していた工程の内製化による利益率向上も期待できます。
営業拠点の統合、資材調達の集約、管理部門の共通化などにより、スケールメリットを活かしたコスト削減が可能になります。グループ全体としての収益性向上が期待できます。
ここでは、電気通信工事業界における最近のM&A事例をご紹介します。
2023年12月、セキュア(東証グロース市場:4264)は、神奈川県内において電気通信・電気設備工事業を営むジェイ・ティー・エヌの株式を取得し、子会社化しました。
セキュアは、「ソフト」と「ハード」で構成される物理セキュリティシステムを事業領域として、主に「オフィス・工場・商業施設」などに対し、ソフトウェアの設計やハードウェアの選定から施工・アフターフォローまで、一貫したサービスを提供している上場企業です。
一方、ジェイ・ティー・エヌは、監視カメラシステム構築を含む電気通信・電気設備に関する工事を提供しており、社内に多数の設備工事に関する有資格者を有しており、様々な施工ノウハウを蓄積している会社です。
セキュアは、拡大する様々な物理セキュリティに対するニーズを背景に事業成長してきましたが、慢性的な人手不足リスクの軽減と更なるノウハウ・専門性の獲得により競争力を高めることなどを狙いとして、本M&Aを決断しました。
2023年11月、エクシオグループは、北日本通信株式会社の全株式を取得しました。
エクシオグループ(東証プライム市場:1951)は、NTTグループ向け各種通信インフラ設備の構築・保守を中心に、無電柱化工事などのインフラや一般通信工事も行う、通信工事事業者大手です。
北日本通信は岩手県における電気、通信、土木に関する公共工事の豊富な実績を有する会社です。
北日本通信が長年にわたって培った公共工事のノウハウと、エクシオグループの都市インフラ・ICTに係るソリューションとの融合により、東北地方の都市インフラ事業基盤を強化することを目的とし、本M&Aに至りました。
2021年3月、協和日成はガイアテックの全株式を取得し完全子会社化しました。協和日成は、ガス工事、建築・設備工事、電設・土木工事などの総合設備工事会社として、首都圏を中心に事業展開しています。
一方、ガイアテックは、東京ガス供給エリアにおけるガス設備工事を中心に、温水式床暖房、プロパンガス設備工事、太陽光発電設備、ガス機器の販売、設置工事など幅広く事業を展開する企業です。
協和日成は、戸建住宅の総合設備一括受注体制の拡大を図り、持続的成長と企業価値の向上を目的として、本M&Aに至りました。
電気通信工事業界でM&Aを行う際に留意すべきポイントを解説します。
電気通信工事業界では技術者が最大の経営資産です。M&Aの成否は、譲渡後に主要な人材が残るかどうかにかかっていると言っても過言ではありません。
従業員への説明のタイミングや方法は、売り手・買い手・アドバイザーが連携して慎重に検討する必要があります。PMI(M&A後の統合プロセス)において、処遇面の不安を解消し、新体制のもとでのキャリアパスを示すことが、人材流出を防ぐカギとなります。
売却を検討する際は、自社の工事実績を体系的に整理しておくことが重要です。学校、病院、データセンターなど難易度の高い施設での施工実績や、官公庁・大手企業との取引関係は、買い手にとって大きな魅力となります。
過去の工事件名、施工内容、顧客リストなどを事前にまとめておくことで、デューデリジェンスがスムーズに進み、適正な評価を受けやすくなります。
電気通信工事業を営むためには建設業法に基づく許可が必要であり、また実務に携わる技術者には電気工事士や電気通信工事施工管理技士などの資格が求められます。M&Aに際しては、これらの許認可や有資格者の状況を正確に把握し、譲渡後も事業を継続できる体制が確保されているかを確認することが不可欠です。
電気通信工事業界は、5Gやデータセンター、再生可能エネルギーといった成長分野を抱える一方、人材不足や多重下請け構造、働き方改革への対応といった構造的な課題にも直面しています。こうした環境のもと、M&Aは事業承継の実現、人材の確保、事業領域の拡大など、多面的なメリットをもたらす有力な経営戦略です。
会社の売却等をお考えの際は、まずはM&Aの専門家へご相談ください。専門家は豊富な知識と経験をもとに、最適な相手先の探索やM&A手法の検討を行います。会社の強み、財務状況、希望条件などを事前に整理しておくと、相談がスムーズに進みます。
リガーレは、電気通信工事業界のM&Aにも精通しているほか、財務・税務デューデリジェンスのみの対応も可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の執筆

シニアアナリスト堀内槙
専門領域:株式価値算定、財務・税務DD、統合後の事業計画の策定等
地方銀行入行後、支店での窓口業務、融資事務、運用商品の提案サポートを経て、M&A本部に異動。主にバックオフィスとして、M&Aに関する提案書の作成、契約書の草案作成、法務チェックに加え、累計数百件を超える株式価値算定の経験を持つ。
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