中小M&Aガイドラインとは?概要やポイントを解説!

中小M&Aガイドラインとは?概要やポイントを解説!

2024年8月、中小M&Aガイドラインが改訂されました。本記事では、中小M&Aガイドラインの概要やポイントなどをわかりやすく解説します。

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中小M&Aガイドラインとは?

中小企業庁は、2015年3月にM&Aの手続きや手続きごとの利用者の役割、留意点、トラブル発生時の対応等を記載した「事業引継ぎガイドライン」を策定しました。

2020年3月には、後継者不在の中小企業のM&Aを通じた第三者への事業の引継ぎを促進するため、同ガイドラインを全面的に改訂した「中小M&Aガイドライン―第三者への円滑な事業引継ぎに向けて―」を発表しました。

これは、中小企業のM&Aにおける当事者や支援機関が適切な行動をとるための指針が示されています。

なお、中小M&Aガイドラインについての詳細は下記リンクよりご確認いただけます。

中小M&Aガイドラインの趣旨・目的

中小M&Aガイドラインの目的は主に2つ挙げられます。

1つは、後継者不在の中小企業の経営者に向け、M&Aに関する情報提供を行うこと、もう1つは、M&A支援機関に対し、適切なM&Aのための行動指針を提示することです。

日本の中小企業における事業承継では、従来、経営者の子どもや親族の中から後継者を選ぶという方法が一般的でした。

しかし、近年は様々な理由から親族内で後継者を見つけることが難しく、後継者不在の企業も非常に多くなっています。

そのような背景から、第三者に会社を承継するというM&Aを事業承継の手段として活用することも増えてきました。

M&Aは比較的新しい事業承継の手段であり、専門的な知識も必要とされる方法です。

中小企業の経営者の中には、M&Aに関する意識・知識・経験のない経営者も多く存在することから、後継者不在の中小企業の経営者の背中を押し、M&Aを適切に進めるための手引きを提供することが中小M&Aガイドラインの大きな目的です。

M&Aの流れやポイントについてはこちらの記事(https://ligare.management-facilitation.com/contents/5005/)もご参照ください。

また、中小M&Aガイドラインには、M&Aの支援機関が、それぞれの特色・能力に応じ、適切にサポートをするための基本事項や行動指針を示すという目的もあります。

中小M&Aガイドラインの変遷

中小M&Aガイドラインは、初版の策定から3年経過した2023年9月には第2版に改訂、2024年8月には第3版として改訂されています。

初版の公表から3年の間に、中小企業を当事者とするM&A市場が拡大し、M&Aの専門業者(主に仲介者やフィナンシャルアドバイザー(以下「FA」という))が急速に増加する中で、M&A専門業者の契約内容や手数料体系の分かりにくさ、支援内容への不満等が課題として目立つようになりました。

そこで、M&A専門業者向けの基本事項を拡充し、更なる規律の浸透を促すことを目指し、第2版が策定されました。

また、第2版では、M&A専門業者との契約内容、手数料体系がわかりにくいといった課題に対応し、中小企業向けに、M&A専門業者への依頼における留意点等が拡充されています。

M&A専門業者の手数料はレーマン方式によって計算される場合が多いですが、「基準となる価額」に様々な考え方があり、採用される考え方によって手数料額が大きく変動するため、「基準となる価額」の考え方や金額の目安、手数料額の目安を確認しておくことが重要であるといった留意点が記載されました。

また、2024年8月には第2版を改訂し、第3版が策定されました。

第3版改訂では、質の高いM&A専門業者が選ばれる環境を促すため、提供する業務の内容・質と、その対価となる手数料の額について、中小企業向けに確認すべき事項が解説されています。

また、第2版の改訂時と同様に、M&A専門業者の支援の質を確保する観点から、仲介者・FAに求められる説明や対応、営業・広告にかかる規律、仲介者において禁止される利益相反事項等について追記されています。

中小M&Aガイドライン(第3版)の概要

ここでは、中小M&Aガイドライン(第3版)の概要についてご紹介します。

中小M&Aガイドライン(第3版)の改訂の趣旨

不適切な事業者(買い手側)の存在や、経営者保証に関するトラブル、M&A専門業者が実施する過剰な営業・広告等の課題に対応し、中小M&A市場における健全な環境整備と支援機関における支援の質の向上を図るという目的から、中小企業向けのガイダンス、仲介者FA向けの留意事項が拡充されました。

中小M&Aガイドライン(第3版)の構成

中小M&Aガイドライン(第3版)は、全139頁にわたり、第1章が後継者不在の中小企業向けの手引き、第2章がM&A支援機関向けの基本事項という2部構成となっています。主な項目は以下の通りです。

第1章(後継者不在の中小企業向けの手引き)

Ⅰ.後継者不在の中小企業にとっての本ガイドラインの意義等

Ⅱ.中小M&Aの進め方

Ⅲ.M&Aプラットフォーム

Ⅳ.事業承継・引継ぎ支援センター

Ⅴ.仲介者・FAの手数料についての考え方の整理

Ⅵ.問い合わせ窓口

第2章(支援機関向けの基本事項)

Ⅰ.支援機関としての基本姿勢

Ⅱ.M&A専門業者

Ⅲ.金融機関

Ⅳ.商工団体

Ⅴ.士業等専門家

Ⅵ.M&Aプラットフォーマー

第3版での主な改正のポイント

①仲介者・FAの手数料・提供業務に関する事項

【中小企業向け】

手数料と業務内容・質等の確認の重要性を示し、納得できない場合にはセカンドオピニオン(他の仲介者やFAへの依頼、手数料の交渉)を検討するよう促しています。

【仲介者・FA向け】

手数料の詳細説明やM&A支援業務のプロセスごとの提供業務の具体的説明、担当者の保有資格、経験年数・成約実績の説明などを求めています。

②広告・営業の禁止事項の明記

【仲介者・FA向け】

広告・営業先が希望しない場合の広告・営業の停止を求めるとともに、M&A成立可能性や条件等について、誤解を与えるような広告・営業等を禁止しています。

③利益相反に係る禁止事項の具体化

【仲介者向け】

追加手数料を支払う者やリピーターへの優遇の禁止、情報の扱いにかかる禁止事項を明確化するとともに、これら禁止事項を行わない旨を仲介者の義務として仲介契約書に定めることを義務化しています。

④ネームクリア・テール条項に関する規律

【仲介者・FA向け】

通常のマッチングは、仲介者・FAが売り手側の名称を伏せたノンネームシートを用い、候補先に対して打診をした後、関心を示した候補先に売り手側の名称を含む企業概要書等の詳細資料の開示(ネームクリア)を行うという流れで進めます。

秘密保持を徹底する観点から、ネームクリアは、興味を示した候補先に対して、売り手側からの同意を取得し、候補先との秘密保持契約を締結した上で実施することを求めています。

また、テール条項(仲介契約・FA契約において、M&A交渉が成立せず、契約終了した場合でも、一定期間内に、売り手側が買い手側との間でM&Aを行った場合、M&A専門業者が手数料を請求できるという条項)の対象の限定範囲の具体化や、専任条項がない場合の扱いについての限定も行われました。

⑤最終契約後の当事者間のリスク事項について

【中小企業向け】

最終契約・クロージング後に当事者間でのトラブルとなりうるリスク事項について解説されています。

【仲介者・FA向け】

リスクの認識時、最終契約締結前等に、当事者間でのリスク事項について、その重要度に応じた対応方法、具体的説明を行うこと等を求めています。

⑥売り手側の経営者保証の扱いについて

【中小企業向け】

M&Aを通じた経営者保証の解除や買い手側への移行を確実に実施するための対応等について明記されています。

【仲介者・FA向け】

売手側に対し、保証の提供先である金融機関等へのM&A成立前の相談等が選択肢である旨の説明等の対応や、最終契約における経営者保証の扱いの調整を行うことを求めています。

【金融機関向け】

M&A成立前又は成立後に経営者保証の解除又は移行について相談を受けた場合、「経営者保証に関するガイドライン」及び「経営者保証に関するガイドラインの特則」に留意し、適切な対応を検討することを求めています。

⑦不適切な事業者の排除について

【仲介者・FA・M&Aプラットフォーマー向け】

不適切な事業者(買い手側)を中小M&A市場から排除する必要があることから、買い手側に対する調査の実施、調査の概要・結果の依頼者(売り手側)への報告、不適切な行為にかかる情報を取得した際の慎重な対応の検討を行うよう求めています。

まとめ

M&Aは専門性の高い手法であり、M&A専門業者に任せることになりがちですが、M&Aを活用した事業承継を成功に導くためには、専門家に任せきりにするのではなく、経営者自身もM&Aについて理解を深めることが重要です。

本記事で紹介した通り、中小M&Aガイドラインでは、経営者に向けM&Aプロセスの手順や留意点について解説されています。M&Aを検討する際には、ガイドラインを参考にしながら、信頼できるM&A専門業者とともにM&Aを進めていくことをおすすめします。

リガーレではお客様のご意向に寄り添い、将来を見据えたM&Aのご支援が可能ですので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の執筆

シニアアナリスト堀内槙

専門領域:株式価値算定、財務・税務DD、統合後の事業計画の策定等

地方銀行入行後、支店での窓口業務、融資事務、運用商品の提案サポートを経て、M&A本部に異動。主にバックオフィスとして、M&Aに関する提案書の作成、契約書の草案作成、法務チェックに加え、累計数百件を超える株式価値算定の経験を持つ。

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