M&Aニーズの高い業種とは?

M&Aニーズの高い業種とは?

昨今、後継者不在の解決や成長戦略の1つとして、M&Aの選択肢を取る企業は増えております。

中堅中小企業にもM&Aが一般化している証として、公表されているだけでも国内のM&A件数は2011年以降の約10年間で3倍以上の水準まで急拡大しています。

様々な業界でM&Aが活発化しているのは事実ですが、どういった目的で行われるかは業種によってもさまざまです。

また、その中でも特にM&Aによる買収ニーズが強い業種というのも存在します。

本記事では、どのような業種にニーズがあるのか、またその背景や理由などについて細かく解説をしていきたいと思います。

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M&Aニーズの高い業種とは

M&Aが活発に起こっている業種には、市場環境や人材不足、国が絡む法規制などが影響していることが多くあります。

また、市場が成長途上である産業や需要の高さに対して供給者がまだまだ確立されていないような業種においては、需要が高くM&Aによって業界再編が起こっていきます。

一方で、既に業界全体の成熟が進み寡占化が起こっている業種や斜陽産業と呼ばれるような時代とともに需要が少なくなっているような業種ではM&Aのニーズも低くなるといえます。

ここからは、M&Aニーズが特に高いと言われている具体的な業種(IT・建設・ヘルスケア・運送)とその背景について1つずつ挙げていきます。

業種ごとにおけるM&Aニーズが高い理由

1.IT業界

・背景:情報化社会における需要の高まり
・ニーズが高い理由:IT人材の不足、新技術の獲得
・参照リンク:『システム開発業界のM&A動向と最新事例』-
 https://ligare.management-facilitation.com/contents/4961/

IT業界は、ソフトウェア・ハードウェア・ネットワーク・情報セキュリティ・AI・IoT・仮想化技術などと非常に多岐に亘っており、それぞれが日々急速度かつ高度に進歩を続けている業界です。

情報社会である現代においての重要度は高く、M&Aのニーズは特に高まっています。

業界全体として成長を続けている反面、人手不足が大きな課題です。IT需要に対して、供給者側となるシステム会社において高度な技術人材や専門知識を有するエンジニア不足が深刻化しており、日々変動する情報のアップデートに対する人材育成が間に合っていないのが現状です。

短期的に人の問題を解決する方法として、M&Aを検討する企業が増えています。

もう1つは、自社にない技術の獲得です。同じシステム開発と言っても、開発案件の規模や使用しているプログラミング言語、顧客の業種など特徴は様々です。

最近では、AI(人工知能)やIoT、仮想化技術といった新しい技術開発を行う企業がどんどん出てきており、そのような技術を獲得する手段としてもM&Aが活用されています。

2.建設業界

・背景:就業者の高齢化と2024年問題
・ニーズが高い理由:有資格者や若手人材の確保、インフラ老朽化への対応
・参照リンク:『建設業界のM&A動向と最新事例』
 https://ligare.management-facilitation.com/contents/4707/

建設業界は、就労人材の高齢化が喫緊の課題となっております。

全就業者のうち、50歳以上が占める割合は50%となっており、これは今後20年で建設人材の半分が引退を迎えていくことを示しています。

また、30歳以下の割合が11%と極端に低く、若者離れが深刻化しています。

加えて、建設資格のほとんどは長年の実務経験が必要であることが多く、有資格者の高年齢化と不足が同時に起こっています。

それだけでなく、2019年に施行された「働き方改革関連法」の猶予措置5年目を迎える2024年においては、時間外労働に対する規制が強化されるため、より人手不足が顕著となっていくことが考えられます。いわゆる2024年問題というものです。

出典:国土交通省「建設業を巡る現状と課題」

もう1つの問題は、建設投資額がピーク時84兆円であった平成初期から平成22年までの間に半分の42兆円にまで減ったことで多くの建設会社が倒産・廃業し、建設業界から多くの人材が流出したことです。

このことが、建設投資が再び増え始めてきた現在に大きな影響を与えており、平成初期に建設された建造物や道路などインフラの老朽化は社会課題となっております。

このような背景があり、売手企業においては高齢化した経営者の事業承継として、また買手においては有資格者や若手人材の確保を目的として建設業のM&Aニーズは高くなっています。

3.ヘルスケア業界(病院、調剤薬局、介護福祉)

・背景:高齢化による需要増、競争環境の激化による業界再編、法改正による事業の不安定性
・ニーズが高い理由:病床数の獲得、業界再編、看護や介護人材の確保
・参照リンク:『調剤薬局業界のM&A動向と最新事例』
 https://ligare.management-facilitation.com/contents/5021/
 『介護業界のM&A動向と最新事例』
 https://ligare.management-facilitation.com/contents/4671/

ヘルスケア関連の業界は、高齢化が進む日本において年々需要が高まっており、M&Aにおいても注目されている分野の1つです。一方で、医療法人・病院・クリニックにおいては医師の高齢化や施設の老朽化、調剤薬局においては薬価の引き下げや他業界からの新規参入による競争の激化、介護福祉においては人材不足など課題も多く抱えております。

医療については、公共サービスとしての側面を持ち合わせているため、医療法によって開設や増床のための許可義務や施設や価格に関する規制、当然ながら医師や看護師の免許資格が必要となります。

このように新規参入や規模拡大が難しいため、M&Aのニーズが高くなっています。

また、医療経営者の高齢化が深刻化しており、地方などでは特にその病院の存続が地域医療の存続に関わるような極めて重大な状況になっているケースもあります。

調剤薬局業界は、規模の経済が働きやすい業態であるため業界大手企業を中心にM&Aが活発に起こっております。

近年では薬の処方だけではなく、在宅医療への貢献や電子処方箋やオンラインへの対応など、超高齢化社会に向けて要求されるサービスの幅が広がっており、中小企業における経営環境は厳しさを増しています。

さらに、ドラッグストアやコンビニ等大手チェーン、EC大手Amazonなどの新規参入によって、大手・中堅同士でのM&Aも活発化しています。

介護福祉業界もまた、今後更なる需要を見据えて同業種・異業種ともにM&Aニーズが高い業種となっています。

少子高齢化の進行は著しく早く、業界全体としての市場規模は拡大していくことが予想される一方で、サービスを提供する側の人材不足が大きな課題となっています。

介護ロボットのようなテクノロジーの導入や海外人材の受け入れなど、中小企業単独では難しい施策がM&Aによって事業効率が図られ進行していくことが期待されています。

4.運送業界

・背景:中小企業が多い業種であること、2024年問題、燃料費の高騰
・ニーズが高い理由:ドライバー不足、拠点の拡大
・参照リンク:『運送業界のM&A動向と最新事例』
 https://ligare.management-facilitation.com/contents/4734/

運送業界は、トラック1台で営業可能であることから小規模事業者が多く、競合との差別化が図りにくいため価格競争になりやすいという特徴があります。

近年は物流量もある程度安定的に推移しており、またECの需要増などもあり、M&Aによってドライバーの確保や拠点の拡大によって事業拡大を目指す会社が増えています。

また、中小企業においてはドライバー不足や燃料費高騰の煽りを受け、急激に経営環境が悪化する企業が出てきています。

大きな課題は、建設業と同様に就労人材の高齢化と2024年問題への対応となっています。

もともと、コストに占める人件費の割合が高い労働集約型の業種であり、労働時間の長さが問題視されていました。

これに対して法規制が入ったことにより、運送会社の経営環境は厳しさを増し、業界全体としてもドライバー不足と輸送キャパの減少が懸念されています。

ドライバー不足は中小企業に限らず業界全体としての課題となっており、早期解決策としてM&Aの需要が高まっています。

上記の労働時間問題を短縮するための具体策として、中継輸送を進める企業が増えています。

長距離輸送の場合の中間地点に倉庫などの物流拠点を設けて複数人のドライバーで分担輸送することで、ドライバー1人あたりの労働時間短縮を実現できます。

この中継地点を獲得するための手段として、M&Aを活用する企業が増えています。

ここまで大きく分けて4つの業界について、M&Aのニーズが高いと言われる背景や理由についてご説明してきましたが、どの業種にも共通していたことは「人」の問題であることが分かります。

それ以外の部分でも業界ごとでの違いはありますが、少子高齢化が進行する日本において需要に応えるだけの労働人材が足りていない業種では特にM&Aのニーズも高まるということが言えるかと思います。

ここから先は、さらに深掘りをして「人」の背景ではない理由でM&Aニーズが高くなっている業種をいくつかご紹介したいと思います。

5.その他、ニーズの高い業種

・EC関連

EC販売は国内外を問わず、インターネット・スマホの普及を背景に急速に市場規模が拡大しています。

さらにはコロナウイルスでの外出自粛なども追い風となり、より一層の需要増加に繋がっています。

アメリカのAmazonや中国のアリババに代表されるような、海外への越境ECの拡大も期待されており、EC市場の可能性は未知数に広がっています。

そのような状況下で、EC販売のノウハウを獲得したいと考えている企業も増えており、リアルの販売に特化している会社からのニーズや同じECでも扱う商材が違う同業種からのニーズなど、いろんなパターンでのマッチングが考えられます。

また業界全体としての歴が浅く、若手経営者も多いことから、M&Aを当たり前の選択肢としている経営者が多いのも1つの特徴として挙げられます。

・酒蔵、蒸留所

日本酒や焼酎といった、日本古来の酒造りを行う酒蔵やワイナリーなどの酒製造業も、M&Aでのニーズが多い業種となります。

日本において酒を製造し販売するには、それぞれ免許の取得が必要となります。

免許取得のためには、人的要件・場所的要件・経営基礎要件・製造技術要件・設備要件など様々な要件をクリアすることが前提となり、新規で1から始めるにはハードルが高い業種となります。

一方で、大手小売業などではPBブランドの確立のために酒造の内製化をニーズとする企業が出ていることや、海外での日本酒人気などが広がっている背景もあり、M&Aニーズが高まっている状況です。

参照リンク:『酒蔵業界のM&A動向について』

まとめ

今回は、活発になっているM&A市場において特にニーズの強い業種について、ご紹介をしてきました。

人材不足や法規制、競争激化による業界再編、新技術やノウハウの獲得など、業種ごとにおいて様々な背景があるといえます。

その業界が、いまどういうトレンドになっているのかを知ることが、M&Aの成功に導く上で重要なポイントにもなるといえます。

弊社の他の記事では、より詳しく業界ごとの動向やM&A事例をまとめております。

本記事内でもいくつかリンクを貼りつけておりますので、そちらも合わせてご確認ください。

御堂筋税理士法人グループの株式会社リガーレでは、数多くのM&Aにおける支援実績をもち、また戦略立案の段階から中長期での伴走サポートを得意とするプロフェッショナル集団です。

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この記事の執筆

アドバイザー中川雄太

専門領域:M&Aアドバイザリー

経営者の後継者問題や企業の成長戦略を支援するM&Aアドバイザーという職種に魅力を感じ、大手M&A仲介ブティックに入社。主に中堅中小企業オーナーに対するアドバイザリー業務に従事し、建設業や卸売業など様々な業種において計10件以上のM&A成約支援に携わる。M&Aのみに留まらず幅広く事業承継支援を行いたいという想いからリガーレに入社。M&A・事業承継を通じて企業の永続的な発展を支援する。

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