資本提携とは?業務提携との違いやメリット・デメリットについて解説
資本提携とは、今まで資本関係に無かった異なる企業同士の一方が(または相互に)株式を持つなどして、新しく資本関係を築くことを指します。
今回は、似たような言葉の業務提携やM&Aとの違いや、資本提携のメリット・デメリット等について解説していきます。
資本提携とは?
資本提携とは、異なる企業同士が資本上の提携関係を築くことで、業務上のシナジー創出や資金面での協力関係を築くことが可能となります。
他社に帰属する資源を活用して自社の事業成長を図ることで、1社単独での事業推進に比べ、効率的に事業成長を図ることが可能となります。
資本提携と業務提携やM&Aとの違い
資本提携提携と業務提携やM&Aは、他社のリソースを活用することにより、事業を展開、発展させていくという点で共通しますが、資本の移動を伴うか伴わないか、という点で異なります。
下図のように、資本の移動を伴わない提携を業務提携と定義し、資本の移動を伴う提携を資本提携と定義しています。
また資本提携の中でも、支配権(経営権)の移動を伴う提携をM&Aと定義することが一般的です。
資本提携の方法
資本提携には、その目的に応じて様々な方法が考えられます。
ここでは、経営権の取得を伴うもの、または伴わないものあせて4つの方法をご紹介させていただきます。
株式譲渡(経営権の移動:あり・なし)
株式譲渡とは、買い手が対象会社の株主が所有する株式を取得し、現金で対価を支払うことで株式を取得するスキームです。
中堅・中小企業のM&Aでは、最もよく使われている手法で、買い手が経営権の取得を目的として100%の株式を取得するのが一般的ですが、経営権の取得を目的としない一部株式譲渡による資本提携が行われることもあります。
第三者割当増資(経営権の移動:なし)
第三者割当増資とは、特定の第三者に対して新株を割り当て発行し、増資するスキームです。
資本関係を持つと同時に対象会社の資金調達も行えることが特徴で、経営権の取得を目的としない資本提携の際に用いられるポピュラーなスキームです。
株式交換(経営権の移動:あり)
株式交換とは、完全子会社となる会社(対象会社)の発行済株式のすべてを完全親会社となる会社(買い手)の株式と交換することによって、対象会社を100%子会社とするスキームです。
株式交換は、1999年の商法改正により導入された制度で、買い手企業の株式を対価とするため、多額の資金がなくても、機動的に他社の買収をすることができるという特徴があります。
なお、2005年の会社法の改正により対価が柔軟化し、現金や完全親会社の発行する社債や新株予約権等を利用することもできるようになりました。
株式移転(経営権の移動:あり)
株式移転とは、単独もしくは2社以上で新たな完全親会社を設立し、それぞれの保有する株式をすべてその親会社に移転する代わりに親会社の発行する株式の割り当てを受けるスキーム。2社以上が資本提携の際に用いる株式移転は、共同株式移転といい、新設した完全親会社(持ち株会社)の100%子会社同士として、同一のグループ内における協力関係を築くことができます。
資本提携を行うメリット
次に、M&Aのような経営権の移動を伴わない場合の資本提携について、そのメリットにつき解説していきます。
資本を含む強固な協力関係を築くことができる
資本提携の目的は、資本関係を築くことによる双方向での支援と言えます。
資本を含む分、単なる業務提携よりもその関係は強固で、販路の拡大を目的とした販売提携や新商品の生産を目的とした生産提携等、業務上の提携もより信頼して協力的に実現することが可能となります。
結果、業界においてより競争力を発揮することが可能となり、よりスピーディーな事業展開さらには企業成長を実現することが可能となります。
提携企業単位での独自性は維持
一方で、経営権の移動を含まない資本提携は、経営権の移動を伴うM&Aと異なり、提携企業単位の独自性は維持できるというメリットもあります。
独自性は持ち株の議決権割合に応じてその影響度合いが異なります。
議決権割合と株主が行使できる権利及び株主総会決議事項の一例は以下の通りとなります。
経営権の移動を含まない資本提携においては、経営の独自性を保つため、33.4%未満に抑えることが一般的です。
少ないリスクで新規事業へ着手できる
資本提携では、双方の経営資源を活用し合うことにより、単独で新規事業を開始する際に比べリスクを抑えてかつ効率的に新規事業への着手が可能となります。
増資による資金調達
第三者割当増資スキームの場合、単なる資本提携関係の構築だけでなく、対象会社の資金調達も兼ねることが可能です。
新規事業への投資資金の調達を行いたい、財務内容の改善が必要、等の場合においては、事業成長という観点に加え、資金調達という目的で資本提携を活用することにより、資金確保や企業の信用力改善を図ることが可能となり、効果的な事業展開を行うことができます。
資本提携を行うデメリット
次に、M&Aのような経営権の移動を伴わない場合の資本提携について、そのデメリットや注意点につき解説していきます。
資本提携先が経営に関与してくる可能性はゼロではない
たとえ、一部(少数)とはいえ、ひとたび株式を保有してしまうと、株主としての権利が発生します。
上記、「議決権割合と株主が行使できる権利及び株主総会決議事項の一例」の図を参考にその影響度を事前に把握したうえで、資本提携の目的と照らし合わせ、適切な割合の提携にとどめておくことが重要です。
一方的な資本提携関係の解消は難しい
資本提携は、資本を含めた財務的な繋がりを有するため、その提携関係を解消することは容易ではありません。
もし想定通りの効果が得られず資本関係を解消する場合は、提携先企業が保有する自社の株式を買い戻す必要があり、いくらで買い戻すのかといった価格交渉や、買取資金の準備等、時間も手間がかかります。
既存株主が保有する株式の希薄化
第三者割当スキームにおいては、新株発行による増資を行うため、発行済みの株式が増えることになり、1株あたりの株式価値が低下します。
当然ながら前向きな増資の場合は、今後の事業成長等を鑑みると中長期的には株式価値の向上に資するケースも十分に考えられますが、増資直後における既存株主が保有する株式価値は下がるということを理解しておく必要があります。
資本提携の進め方とポイント
次に資本提携の進め方やポイントについて解説します。
戦略立案
まずは自社の経営戦略をしっかりと立案しましょう。
そのうえで、それを成し遂げるために不足しているリソース(自社の課題)を抽出します。
そして、その課題が資本提携で解決可能か、可能であればどのような提携方法が適しているか等、資本提携を行う目的を明確にします。
場合によってはM&Aや業務提携も視野に入れ、様々な選択肢と比較検討することも効果的です。
提携先の選定
上記で明確にした目的に合致する提携候補先を抽出します。
あくまでも資本提携には相手方との合意が必要となりますので、断られることも想定し、複数企業候補先を抽出することが望まれます。
事業シナジーは当然のことながら、財務状況や業界内でのうわさ等も含め総合的に勘案し、提携先を選定しましょう。
交渉・合意
候補先企業が決まったら、相手との具体的な提携内容の交渉に移ります。
出資比率、双方の業務範囲、責任の所在、利益の分配方法等を協議し、契約の合意を行います。
必要に応じて、弁護士等リーガルアドバイザーの助言も参考に、契約内容の詳細を決定していくことをおすすめします。
資本提携及び業務上の協業開始
具体的に資本提携関係がスタートしたら、提携先企業との連携を密に行い、業務の遂行や必要な情報共有を行っていきましょう。場合によっては、企業間を横断したプロジェクトチームの組成等により、提携業務がスムーズに進んでいくよう取り組んでいきましょう。提携先企業とのコミュニケーションは資本提携の成功には欠かせません。
定期的なミーティングや報告会の開催を通じて、進捗状況や課題の共有を行い、協力体制を築いていくことが重要です。
評価・改善
企業間のコミュニケーションを通し定期的な情報共有を行うと同時に、提携業務の進捗状況や成果をチェックし定期的に評価をすることも大事です。
そのうえで、品質改善や販売方法に問題があれば早めに改善策を実施していく必要があります。
また、提携の効果が想定より得られていない場合や両社の関係が悪化した場合等は、提携の終了を検討することも必要です。
まとめ
資本提携により企業間での協力関係を築くことで、企業の独自性を保ちながら強固な提携関係を構築することが可能となり、単独での事業推進に比べ効率的な事業展開さらには企業成長に期待できます。
一方で、資本提携の強度設計や既存株主の希薄化等の注意点もあるため、経営権の移動を含めた企業提携を含め様々な選択肢と併せて検討することが効果的です。
シナジー効果を最大限に発揮し、当初の目的を達成するためにも、まずは信頼できる専門家を交え、しっかり時間をかけて戦略を検討していくことが重要です。
御堂筋税理士法人グループの株式会社リガーレでは、数多くの資本提携を含む企業提携における支援実績をもち、また戦略立案の段階から中長期での伴走サポートを得意とするプロフェッショナル集団です。
シナジー効果を得られるよう資本提携を実現したい、という企業様は是非、株式会社リガーレへお気軽にご相談ください。
この記事の執筆
取締役COO青山佳敬
専門領域:マネジメント、M&Aアドバイザリー
地方銀行入行後、法人向けファイナンス業務を担当。
その後、監査法人系M&Aアドバイザリーファームへ出向し、以後長期に渡りM&Aアドバイザリー業務に従事。国内ミドルマーケット案件を中心に多くの案件に責任者として関与、事業会社の後継者問題解決・企業価値向上に寄与。
2021年御堂筋税理士法人グループに入社、2022年からは株式会社リガーレとしてM&Aアドバイザリー業務を中心としたソリューションサービスを提供している。