M&Aの意向表明書とは?記載内容や基本合意書との違いについて解説!

M&Aの意向表明書とは?記載内容や基本合意書との違いについて解説!

M&Aの意向表明書は、買い手企業が売り手企業に対し、M&Aを行う意向を伝えるものです。

本記事では、意向表明書の具体的な記載内容、基本合意書との違い、意向表明書の作成時のポイントなどを詳しく解説します。

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M&Aにおける意向表明書とは

意向表明書とは、M&Aの買い手候補企業が売り手企業に対し、M&A実施の意向や買収にあたって設ける条件を示すために提出する書類で、LOI(Letter of intent)と呼ばれることもあります。

買い手候補が複数いる場合、意向表明書を提出してもらい、売り手企業は、具体的交渉を進める買い手を選定するために用います。

意向表明書は、買い手候補企業の意向を売り手企業に伝え、円滑にM&Aの成約へ繋げるという重要な役割があります。

意向表明書の記載内容

意向表明書に記載する主な項目は以下の通りです。

買い手企業の企業概要

買い手企業の企業概要が記載されます。

例えば、商号、代表者氏名、事業内容、沿革、資本金額、グループ企業の概要、財務状況などを記載します。

M&Aの目的

M&Aを望んでいる意向の表明やその理由、目的などを記載します。

M&Aのスキーム

株式譲渡や事業譲渡などM&Aのスキームの希望を記載します。

譲受希望金額

買い手企業がデューデリジェンス前の段階で想定している買収金額を記載します。

買い手候補が複数いる場合、売り手企業にとって、買収金額は買い手企業を選ぶための重要な項目となります。

買い手企業は、提示金額が多額の方が優位に立てるため、「〇〇円~〇〇円」というように、金額に幅を持たせて提示することもあります。

ただし、実際の買収金額は、最終合意前の交渉の段階で変更される場合もあります。

資金調達方法

買収資金の資金調達方法について、自己資金によるか、金融機関からの融資によるか、増資によるかなどを記載します。

M&A後の経営方針

売り手企業にとって、M&A後の会社の動向は重要な関心事項です。

M&A後の経営方針を明確に提示することで、売り手側の買収への不安を緩和することが可能です。

具体的には、事業戦略、商号の継続の可否、想定しているシナジー効果、組織の再編、取引先への対応などを記載します。

売り手企業の役員・従業員の処遇

多くの売り手企業は、M&A後に残される役員や従業員の処遇に不安を感じています。

M&A後は組織再編が行われることも多いですが、役員や従業員の待遇、雇用条件が現状より低くなる場合、従業員の離職に繋がるケースもあります。

そこで、M&A後の売り手企業の役員や従業員の雇用の継続、雇用条件の維持または改善などの提示を行うことで、売り手企業からの印象も良くなり、交渉を進めやすくなります。

M&Aスケジュールに関する要望

M&Aを進めるスケジュールについて、基本合意の締結日、デューデリジェンスの実施日、最終契約の締結日、クロージングの実行日など、具体的な要望を記載します。

売り手側と買い手側で共有のスケジュール認識を持つことにより、それに向かって検討を進めやすくなります。

買い手企業が上場企業の場合、上場基準や社内規定によって、M&Aの実施について適時に開示しなければならないこともあります。

これは、売り手側の希望のスケジュールに合うものかどうか、買い手候補を選定する際の判断基準になることもあるため、上場企業が買収を希望する場合は、適時開示の時期などのスケジュールも明記しておくことが重要です。

有効期限

意向表明書の記載内容の有効期限を定めることで、売り手側が意思決定しやすくなり、M&Aのプロセスが進めやすくなります。

基本合意や最終契約の締結など、取引の段階ごとに区切り、期限を提示することもできます。

デューデリジェンスの範囲・内容

デューデリジェンス(買収監査)とは、売り手企業の財務、法務、労務、人事、ビジネスなどに関わるリスクを調査する手続きです。一般的に、デューデリジェンスは専門家に依頼し、通常1カ月~数カ月程度の時間をかけて行われます。

意向表明書において、デューデリジェンスの実施範囲や実施期間を記載することで、M&A交渉をよりスムーズに進めることができます。

独占交渉権

入札方式のM&Aの場合、買い手企業は、売り手企業とのM&A交渉を自社が独占して行えるよう、独占交渉権を付与してもらいたいという旨を意向表明書に記載します。

買い手企業はデューデリジェンスの費用を負担する必要があるため、デューデリジェンスの実施後に、売り手企業が他の買い手候補企業とM&Aを成約することを禁止する目的で、独占交渉権を依頼します。

意向表明書の提示のタイミング

意向表明書は、一般的にトップ面談の後に提出されます。

トップ面談を行い、買い手側の買収意向が明確となり、M&Aの具体的な交渉がスタートするという段階で、買い手企業は、売り手企業に対し、買収の意向を伝えるために提出します。その後、譲渡額やM&A成立後の運営方針などの諸条件につき合意がされた段階で基本合意書を取り交わし、デューデリジェンスに進みます。

なお、M&A交渉が進んでいる企業が1社のみである場合、意向表明書を省略することも多々あります。

その一方、前述のように、買い手候補が複数いる場合は、期限を定め、買い手候補から意向表明書を提出してもらうこともあります。

意向表明書の法的拘束力の有無

意向表明書は一般的に法的拘束力はありません。

意向表明書は、デューデリジェンスが完了していない段階で、買い手側の買収の意向や買い手側の考えている買収条件等を記載するものです。

売り手企業との合意を示すものではないため、法的拘束力は持ちませんが、買収条件等の記載はその後のM&A交渉プロセスに大きな影響を与えることとなります。

重大な問題やリスクが発見されるといったことがない限り、買い手企業が意向表明書の内容を一方的に撤回することはほとんどありません。

基本合意書との違い

基本合意書は、M&A取引の交渉段階において、売り手企業と買い手候補企業の間で、M&Aに関する基本的な諸条件が合意された後、最終契約に先立ち、取り交わす合意書です。

この段階では最終的な合意が成立するわけではありませんが、最終的な契約を締結する前に、買い手企業が想定する取引条件等を取り決めておくことで、その後の交渉を円滑化するためのものです。

それに対し、意向表明書はM&A交渉のより早い段階で、買い手候補が買収の意思を示す場合に提示するもので、内容は、M&Aの実施の意向と、買収の希望額や譲受資産、M&Aスキーム等、大まかな条件にとどまります。

このように、意向表明書が買い手側の意思表示である一方、基本合意書は双方の合意を証する書類という点が大きな違いです。

意向表明書のポイント

意向表明書の提出は、M&Aを進める中で、買い手側から売り手側へ買収の熱意を伝える重要なプロセスです。

買い手企業が意向表明書を作成する際に注意すべきポイントと、売り手企業が意向表明書を確認する際に注意すべきポントをそれぞれ以下にまとめました。

買い手企業が意向表明書を作成する際のポイント

買い手企業が注意すべきポイントは以下の通りです。

作成した意向表明書は、提出する前にM&Aアドバイザーに確認してもらうといいでしょう。

M&Aの目的とメリットを明確に示す

M&Aを行う目的や、自社に売却するメリットをわかりやすく記載することで、売り手企業がM&A後の展望や将来のビジョンをイメージしやすくなるでしょう。

具体的には、高いシナジー効果や成長可能性などを、根拠と併せて示すことで、売り手からの印象も良くなります。

買収への熱意をアピールする

意向表明書では、買収に対する熱意を伝えることも重要です。

特に買い手候補が複数いる場合、他社との差別化を図るためにも、売り手企業の共感を得られるよう、買収への熱意を伝えるメッセージを盛り込むようにすると効果的です。

売り手企業の希望を事前に確認する

意向表明書は買い手企業が作成するものですが、作成する前に売り手企業の希望を確認し、内容に反映させることも重要です。

買い手企業の一方的な意思を記載し、売り手企業の意向を無視した意向表明書となると、売り手企業はM&Aを前向きに進める意思を失ってしまう可能性があるため、注意しましょう。

他の買い手候補がいる場合は、他社よりも良い条件を提示する

競合がいる場合は、意向表明書をもって、他の買い手候補企業と比較検討されることとなります。

他社に比べ、いかに自社が売却先としてふさわしいと思ってもらえるかが重要ですので、他社よりも良い条件を提示すれば有利になると言えます。

買収金額だけでなく、企業規模や技術力、ノウハウなど、自社の強みを活かした条件で差別化を図り、アピールすると良いでしょう。

売り手企業が意向表明書を確認する際に注意すべきポイント

意向表明書は、売り手企業にとって買い手となる企業を選定するための重要な判断材料です。

売り手企業が意向表明書を確認する際に注意すべきポイントは以下の通りです。

買い手が提示した金額を精査する

意向表明書で特に重要なポイントは価格です。

単純な価格の高さだけで判断せず、その金額がどのような理由で設定されたのか、価格の妥当性を検証するために、算定プロセスを精査することが重要です。

買い手企業が意向表明書ではあえて高い金額を提示し、独占交渉権を獲得した後で、値下げ交渉をするケースもあるため、買収金額が高く提示されている場合も、算定根拠を鑑み、誠実な価格設定がされているかを判断する必要があります。

譲れる条件と譲れない条件を明確化する

M&Aを成立させるためには、売り手と買い手それぞれが一方的に条件を主張するのではなく、双方がある程度譲歩しなければなりません。

自社を売却する上で、譲れる条件、譲れない条件を明確に整理しておくことで、適切な買い手企業が見つかりやすくなるでしょう。

M&A後の従業員の処遇、会社の運営方針など、重要な条件を確認する

売り手企業にとっては、大切な従業員の処遇や、M&A後の経営方針なども非常に気になるポイントです。

このように重要な事項については、早い段階で買い手企業に確認し、方向性を擦り合わせておく必要があります。

機密性の高い意向表明書の取り扱いに十分注意する

意向表明書の記載内容は、売り手側、買い手側双方にとって、非常に重要な機密事項です。

別途秘密保持契約書を締結するケースが多いですが、仮にない場合でも、意向表明書は細心の注意を払い、扱うようにしましょう。

当事者が上場企業の場合は、インサイダー情報にも触れるため、特に注意が必要です。

まとめ

意向表明書はM&Aにおいて必須のプロセスではないものの、売り手企業が買い手企業を選ぶための重要な書類です。

意向表明書の出来が、M&Aの成約に直結するとも言えるでしょう。

しかし、買い手企業が自ら意向表明書を仕上げるのは難しいため、意向表明書を作成する際にはM&Aの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

御堂筋税理士法人グループの株式会社リガーレでは、数多くのM&A案件を支援した経験と実績がありますので、意向表明書の作成のサポートももちろん可能です。

企業の買収、売却をご検討の際はお気軽にご相談ください。

この記事の執筆

シニアアナリスト堀内槙

専門領域:株式価値算定、財務・税務DD、統合後の事業計画の策定等

地方銀行入行後、支店での窓口業務、融資事務、運用商品の提案サポートを経て、M&A本部に異動。主にバックオフィスとして、M&Aに関する提案書の作成、契約書の草案作成、法務チェックに加え、累計数百件を超える株式価値算定の経験を持つ。

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