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警備業界の売却相場は? M&A成功事例から学ぶ「警備員流出リスク」を防ぐ交渉術

ビルメンテナンス業界においては、後継者不在、人材不足を背景としたM&Aが活発に行われております。この記事では、ビルメンテナンス業界におけるM&A動向、M&A成功に向けたポイント、最新事例について解説します。
目次
ここではビルメンテナンス業界の市場動向、取巻く環境について解説します。
ビルメンテナンス業とは、日本標準産業分類上の「建物サービス業」に位置づけられる業種で、ビルや商業施設などの建物を対象として、清掃・保守・設備運転などを総合的に担う事業を指します。
業務の範囲は幅広く、大きく以下の5つに分類されます。従事する業務によっては電気主任技術者、消防設備点検資格者など、法律で定められた専門資格の取得が求められる場合があります。
| 分類 | 主な業務内容 |
| 環境衛生管理業務 | 建物内外の清掃・予防清掃、空気環境・給排水の管理、害虫駆除、廃棄物処理など |
| 設備管理業務 | 電気通信・空調・給排水・消防用設備・昇降機などの設備の運転・整備 |
| 建物・設備保全業務 | 建物や各種設備の定期点検・調査 |
| 警備・防災業務 | 警備・防火防災管理、駐車場管理など |
| その他管理業務 | 受付・案内・電話応対、ビル経営に関する企画・運営・賃貸営業など |
業界全体では大手上場企業22社のシェアが約30%程度にとどまり、大手による寡占度は比較的低い構造となっています。
一方で上位4社(イオンディライト、スターツコーポレーション、共立メンテナンス、日本管財ホールディングス)が業界売上高の約20%を占めています。
全国ビルメンテナンス協会の推計によると、ビルメンテナンス業界の市場規模(総売上高)は2021年度時点で約4.3兆円とされており、その後も緩やかな拡大が続いています。
背景には、新規建築物の竣工や既存ビルの空室率改善、さらに近年の人件費上昇に伴う契約単価の見直しなどが挙げられます。
景気変動の影響を受けにくい安定需要型の業界であり、今後も底堅い成長が見込まれます。
今後も底堅い成長が見込まれるものの、ビルメンテナンス業界は多くの経営課題を抱えております。
主たる課題として以下3つ解説いたします。
ビルメンテナンス業は人的サービスが中心の労働集約型産業であり、人材の確保・育成は経営の根幹をなします。
しかし業界の従業員構成は他業種と比較して高齢化が顕著で、令和4年賃金構造基本統計調査によると「ビル・建物清掃員」の平均年齢は54.7歳、「警備員」は51.1歳と、全業種平均(43.7歳)を大きく上回っています。
賃金水準の低さや夜間・休日勤務などの労働環境が若年層の採用を困難にしており、慢性的な人材不足が続いています。
安定した需要がある一方、ビルの新規供給が大幅に増えているわけではなく、既存物件をめぐる受注競争が続いています。
発注者側のコスト意識の高まりを背景に競争入札が増加しており、同業他社との価格競争が一段と激しくなっています。
ビルメンテナンス業界は費用の大部分を人件費・外注費といった人的コストが占める構造となっており、業界の売上高に占める人件費比率は約8割(直接人件費47.1%・間接人件費7.5%・外注費20.6%)に達します。
同一労働同一賃金制度の適用(2021年4月)や採用競争激化に伴う賃金引き上げ圧力が強まる中、コスト増を契約単価に転嫁しきれていない事業者も多く、収益が圧迫されています。
今後も人件費上昇が見込まれる中、省力化ロボットやAI・IoT機器の導入、外国人労働者の活用など多角的なアプローチが急務となっています。
後継者不在や深刻な人材不足を背景に、中小規模のビルメンテナンス会社が大手企業の傘下に入るM&Aが増加しています。
また、大手企業による海外展開を目的としたM&Aや、異業種からの参入を目的としたM&Aも活発化しています。
ビルメンテナンス業界において、M&Aを活用した場合の主なメリットは以下の通りです。
1.後継者不在問題の解決
後継者の不在や株式取得資金の問題から事業承継が困難なケースも少なくありません。
M&Aを活用することで、事業・従業員・取引先などの経営資源を第三者へ円滑に引き継ぐことができます。
2.個人保証・担保提供の解消
親族や従業員への承継では後継者が独り立ちするまで旧オーナーが個人保証を継続せざるを得ないケースもあります。
M&Aでは買手企業が保証・担保を引き継ぐため、旧オーナーの負担が解消されます。
3.従業員の雇用継続
後継者問題が未解決のまま廃業となれば、長年会社を支えてくれた従業員を解雇しなければなりません。
M&Aを選択することで、従業員の雇用と労働条件を維持したまま事業を継続できます。
4.経営の安定・拡大
規模の大きな買手企業の経営基盤・ノウハウ・ネットワークを活用することで、自社単独の成長を超えた事業拡大と財務安定が期待できます。
5.売却利益の獲得
M&Aによる売却額は、親族内承継・従業員承継と異なる評価方法が適用され、一般的に高い水準となります。
長年の経営努力に対する正当な対価を手にできる機会です。
1.同エリアにおけるシェア向上による収益改善
同一エリア内の事業者を取り込むことでシェアを拡大し、規模の経済によるコスト削減や価格競争力の強化、人員の弾力的な配置による生産性向上が見込めます。
2.優秀な人材の獲得
慢性的な人材不足が続くビルメンテナンス業界において、M&Aによる資格保有者・熟練スタッフの一括取得は最大のメリットの一つです。
採用・育成にかかる時間とコストを大幅に圧縮できます。
3.新規エリアへの進出
新規エリアへ自力で参入するには市場調査・拠点確保・許認可手続き・人材採用など多くの手間と時間を要します。
M&Aであれば既存の顧客基盤・ノウハウ・スタッフをまとめて取得でき、即戦力での展開が可能です。
4.受託業務の拡充・サービス強化
M&Aにより許認可・専門ノウハウ・人材を一括取得することで、対応可能な業務領域を広げ、既存顧客へのクロスセル強化や新規顧客層の開拓による収益機会の創出が期待できます。
ここでは、ビルメンテナンス業界の売却相場について解説します。
中小企業におけるM&Aにおいては、時価純資産+営業権(EBITDA×2~4年程度)により算定される価格が一般的な取引レンジとなっております。
(例)時価純資産300百万円 / EBITDA30百万円
300百万円+(30百万円×中央値3年)=390百万円
類似上場企業との比較(EV/EBITDA倍率)も参考になります。直近のビルメンテナンス業界における中央値は約7倍です。
(例)EBITDA30百万円 / 非事業用資産150百万円 / 無借金の場合
30百万円 × 7倍 + 非事業用資産150百万円 = 360百万円
※売却価格の相場・計算方法は「会社の売却価格・相場を知ろう!会社売却を進める前に必須の知識を徹底解説!」にて詳細に解説しておりますので、ご参照ください。(https://ligare.management-facilitation.com/test/contents/4417/)
ここでは、ビルメンテナンス業界における最近のM&A事例を3つご紹介します。
綜合警備保障(2331)によるカンソーの子会社化
綜合警備保障㈱(ALSOK)は2024年12月1日付で、ビルメンテナンス業を営む㈱カンソー(大阪)の全株式を取得し子会社化しました。
ALSOKは警備サービスを中心に、建物維持管理などのファシリティマネジメント(FM)事業や介護事業を展開しています。FM事業では人材確保・生産性向上といった課題に直面しており、カンソーのグループ化により関西圏でのFM事業の拡大・強化を図ることを目的としてM&Aを実施しました。
㈱シーズメン(現スターシーズ㈱)は2024年8月9日付で、ビルメンテナンス業を営む㈱ミヤマ(長野県)の全株式を取得し子会社化しました。
衣料品小売事業を主力とするシーズメンは、季節や景気動向の影響を受けやすい事業構造の改善を目指し、外部環境の変化に左右されにくい安定事業の取得を検討していました。長野県を中心に30年以上の実績を持つミヤマの安定した営業基盤が、事業ポートフォリオの再構築に資すると判断しM&Aを決定しました。
総合ビルメンテナンス事業を手掛ける㈱サンケイビルマネジメントは2024年10月1日付で、高速道路交通規制業務を中心に展開する伸和サービス㈱(大阪)の全株式を取得し子会社化しました。
伸和サービスは西日本エリアを中心に約50年の歴史を持つ企業です。
サンケイビルマネジメントは高速道路規制業務を今後重要性が高まる社会インフラ分野と位置づけており、新規事業領域への参入と西日本エリアでの営業基盤強化を目的としてM&Aを実施しました。
1.事業成長の実現
売却後に一層の事業成長が期待できる買手かどうかが重要なポイントです。
シナジーの高い相手への売却は、高値での取引にもつながります。
2.専門家のサポート
M&Aには法務・財務・税務など多岐にわたる専門知識が必要です。
信頼できる専門家に早めに相談することで、交渉を有利に進めることができます。
1.シナジー効果についての調査
買手・売手双方のシナジーを事前に精査することが不可欠です。
対象会社の受託業務領域・受注形態・管理物件の特性・顧客数・収益性、またM&A後のコスト削減効果などを具体的かつ定量的に分析・検証することが求められます。
2.人材流出
人材確保はビルメンテナンス業界のM&Aにおける主要な目的の一つです。
会社売却を契機に従業員が離職するリスクを避けるためには、従業員への丁寧な説明とPMI(M&A後の統合プロセス)の計画的な実施が鍵を握ります。
説明のタイミングについては売り手側・アドバイザーも交えて慎重に検討しましょう。
3.デューデリジェンスの実施
労働集約型産業であるため、人事・労務管理の適正性(未払残業の有無等)、受注先とのトラブルや訴訟リスク、簿外債務・偶発債務の有無など、人的側面を中心としたデューデリジェンスが特に重要です。
ビルメンテナンス業界では、高齢化・人材不足・人件費高騰という三重の課題を背景に、M&Aによる事業承継や業界再編が加速しています。売却・買収を問わず、まずはM&A専門家へのご相談をお勧めします。
専門家は豊富な知識と実績をもとに、最適な相手先の探索やM&A手法の選定・交渉サポートを行います。弊社はビルメンテナンス業界のM&Aに精通しているほか、財務デューデリジェンスにも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

この記事の執筆

シニアアドバイザー清水洋伸
専門領域:M&Aアドバイザリー、財務・税務DD、財務コンサルタント、資金調達支援等
大学卒業後、大手銀行に入行。
M&A、事業承継、ファイナンス等法人ソリューション業務に約13年間従事。御堂筋税理士法人に入社後は、M&Aアドバイザリー業務を軸に、円滑な事業承継ならびに戦略的な企業成長を実現していくうえでのサポートを実施している。お客様に寄り添った伴走型支援を信条とし、お客様の成長・発展に貢献して参ります。
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