子会社化とは?メリット・デメリットや関連会社との違いを解説!
近年M&Aが活発に行われる中で、他社を子会社化したり、反対に規模の大きい企業の子会社となることは、事業の成長・発展に向けた経営戦略における選択肢の一つです。
本記事では、子会社の定義、子会社化をすることによるメリット・デメリット、子会社の種類、手続きの流れ等について詳しく解説します。
株式会社リガーレでは無料株価診断を行っております。
お気軽に診断してみてください。
子会社化とは?
会社法では子会社を、「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義しています(会社法2条3号)。
また、親会社を「株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義しています(会社法2条4号)。
つまり、子会社、親会社に概要するかどうかは、議決権の割合だけでなく、「経営を支配しているかどうか」が重要な判断基準となります。
「経営を支配している場合」とは、「財務及び事業の方針の決定を支配している場合」を指し、会社の最も重要な意思決定機関である株主総会での議決権を50%超保有しているような場合を意味します。
すなわち、子会社化とは、他の会社の株式の過半数を取得して経営権を獲得し、自社グループの支配下とすることをいいます。
なお、子会社化のケースとしては、他社の買収に限らず、もともと自社で保有していた事業を子会社とするようなケースもあります。
子会社の種類
子会社は以下のような種類があります。各子会社の特徴を解説します。
完全子会社
親会社に100%の株式を保有されている会社を完全子会社といいます。
つまり、完全子会社は、親会社が子会社の経営権を完全に支配しており、親会社の意向が完全に反映されるという特徴があります。
また、完全子会社は、親会社の連結決算の対象となります。
連結子会社
連結子会社とは、親会社に議決権がある株式の過半数を保有されている子会社を指します。
連結子会社は連結決算の対象となるため、子会社の業績が親会社の財務に大きく影響する可能性があります。
非連結子会社
非連結子会社とは、連結決算の対象から除く子会社を指します。
親会社の規模に対し、資産や売上高の額の重要性が低い場合などが非連結子会社となります。
関連会社との違い
子会社と関連会社との大きな違いは、株式保有比率が違う点です。
関連会社とは、親会社が議決権の20%以上を保有し、経営方針に重要な影響を与えることができる会社を指します。
子会社は、「支配されている」のに対し、関連会社は「影響を受けている」という定義の違いがあり、経営への関与の度合いが異なります。
子会社は株式保有比率が過半数であることが基準となりますが、関連会社は20%以上が基準となります。
ただし、子会社の場合と同様に、20%未満であっても実質的に意思決定に対する影響を与える状況にあると考えられる要件を満たす場合は、関連会社に該当します。
子会社化する方法
ここでは子会社化をする主な方法をご紹介します。
株式譲渡による方法
株式譲渡とは、子会社化の対象となる会社の既存株主が所有する株式を、他の企業が取得し、現金で対価を支払うことで経営権を獲得する方法です。他の企業が50%超の株式を取得した場合に、子会社が成立します。
中堅・中小企業のM&Aでは、最もよく使われている手法で、買い手は100%の株式を取得するのが一般的です。
買い手側は、新規事業への参入、既存事業の拡大などを目的に実施することが多い方法です。
事業譲渡による方法
事業譲渡は、企業の事業の一部または全部を他社に譲渡する手法です。
事業譲渡は、会社全体を譲渡するのではなく、特定の事業や資産を個別に譲渡するため、子会社化したいという場合は、買い手側企業が子会社を設立し、その会社に売り手側企業の事業を譲渡するという方法で行います。
事業譲渡では、株式の売買は行わないため、一部の事業を譲渡する場合は、売り手側企業は引き続き存続するという特徴があります。
株式交換による方法
株式交換とは、完全子会社となる対象会社の発行済株式の全てを完全親会社となる会社の株式と交換することによって、対象会社を100%子会社化する手法です。
株式譲渡との大きな違いは、買収の対価です。
株式譲渡では金銭を用いるのに対し、株式交換では、一般的に親会社となる企業の株式を交付するため、資金調達が不要となる点がメリットとなります。
株式移転による方法
株式移転とは、子会社となる対象会社が、新設する親会社に自社の株式をすべて移転させ、完全子会社となる手法です。
株式交換と似た手法ですが、株式移転は親会社を新設するのに対し、株式交換では既存の会社を親会社とする点が異なります。
株式移転の大きなメリットは、株式交換と同様に、取得の対価を新しく発行した株式にできるため、資金が不要である点です。
株式移転は、持株会社(ホールディングス)の設立時に採用されることが多い方法です。
子会社化するメリット
ここでは子会社を作る目的、メリットを解説します。
経営資源を有効活用できる
自社にない経営資源等を持つ企業を子会社化することで、子会社が保有している資金、ノウハウ、人材などの経営資源を引継ぎ、有効活用できるという点は大きなメリットです。
また、子会社となった企業にとっても、親会社のブランド力、信用力を使って販路を開拓することができるといったメリットがあります。もちろん、そのようなネームバリュー以外にも親会社の持つ人材、ノウハウ、設備などを活用できるようになります。
責任の所在がわかりやすくなる
それぞれの子会社が、それぞれの事業に特化することで、各子会社がどの程度の利益を生み出したのか、また反対に何が原因でどの程度の損失が出たのか、といったことが明確になります。
たとえば、規模が大きく全国に事業所があるような企業が、エリアごとに子会社を設立するといったケースがあります。
迅速な意思決定ができる
会社の規模が大きくなるにつれ、経営の意思決定に時間を要する場合があります。
子会社の設立により、各事業に関する意思決定機能を子会社に渡せば、各社の状況に応じた判断を迅速に行えるようになります。
節税効果が期待できる
法人税は課税所得に法人税率を乗じて計算され、法人税率は企業の資本金や所得に応じて決定されます。
そのため、子会社化により、課税所得を親会社と子会社で分けることで軽減税率が適用され、節税できる可能性があります。
M&Aで子会社化するデメリット
子会社を作るメリットを解説しましたが、ここではデメリットや注意点を解説します。
実際に子会社化を進める前に、子会社を作るメリットと併せてデメリットも理解しておきましょう。
親会社、子会社間の情報共有、連携が難しくなる
子会社が自社の裁量によって経営判断を行うようになると、子会社内のマイナスの情報や状況が親会社には伝わりにくくなるという問題があります。親会社の経営者の目が行き届きにくくなることで、親会社の経営方針や経営理念からはずれた方向で経営が行われてしまうという可能性もあるでしょう。親会社は、子会社の意思を尊重しながらも、親会社として、子会社の経営を管理・監督する必要があります。
親会社、子会社それぞれの管理コストがかかる
親会社と子会社が別法人となると、それぞれに管理部門の設置が必要となり、設備や人材の費用が追加でかかることとなります。給与の支給や人事面での事務手続きなど、作業の工数が増加するでしょう。
また、子会社の経営指標などの把握、予実管理など、子会社の経営面のフォローも必要となる点にも注意が必要です。
完全子会社の場合以外は損益通算が認められない
親会社と子会社は、完全子会社の場合のみ、グループ通算制度によって損益通算が認められています。
グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算および申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度です。
つまり、自社の一部を切り出して子会社化する場合、完全子会社でなければ損益通算ができないため、税金面で不利になる可能性があります。
また、子会社化した場合、法人住民税の均等割を別途支払う必要がある点も不利な点です。
子会社化を成功させるポイント
最後に、子会社化を成功に導くポイントを説明します。
入念なデューデリジェンス(買収監査)を行う
デューデリジェンスとは、M&Aの最終契約締結前に、買収側が買収対象会社(事業)のリスクや価値を適正に把握するための調査を指します。
(デューデリジェンスについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。→https://ligare.management-facilitation.com/contents/5126/)
外部の会社を子会社化する場合、メリットだけではなく様々なリスクがあるため、それを買収前のデューデリジェンスにより明らかにしておくことで、事前に対策を講じたり、買収の中止を検討するなど、リスクを回避することができます。
親子関係を良好に保つ
子会社を設立した場合、親子関係を良好に保つため、双方の企業が協力することが重要となります。
特に、親会社から一部事業を切り離す場合ではなく、買収により他社を子会社に迎える場合は、注意が必要です。
社風や経営理念の異なる会社をグループに迎えるということは、文化の違いによる衝突も起こりやすく、子会社化をしたメリットが受けられないケースもあります。
買収の交渉段階から、相手企業との友好関係を築くことを意識し、一方的な交渉ではなく、相手企業のメリットを丁寧に伝えると良いでしょう。
また、買収企業と売却企業での直接交渉では、お互いの主張を伝えにくいこともあるため、ファイナンシャルアドバイザー(FA)など、M&Aの専門家を利用することで、交渉がスムーズに進めやすくなるでしょう。
自社だけで判断せず、外部の専門家の意見を聞くことで、より良い投資判断や交渉が可能となります。
まとめ
今回解説したように、子会社化にはメリットとデメリットがあり、それぞれ理解した上で、子会社化を進める必要があります。
自社の一部の事業の子会社化やM&Aによる他社の子会社化など、うまく活用することで自社の発展にも繋がります。
リガーレはこれまでに多数のM&Aによる子会社化の実績があります。
M&Aによる子会社化を検討したい場合は、貴社の意向に合う方法をご提案させていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。
この記事の執筆
シニアアナリスト堀内槙
専門領域:株式価値算定、財務・税務DD、統合後の事業計画の策定等
地方銀行入行後、支店での窓口業務、融資事務、運用商品の提案サポートを経て、M&A本部に異動。主にバックオフィスとして、M&Aに関する提案書の作成、契約書の草案作成、法務チェックに加え、累計数百件を超える株式価値算定の経験を持つ。