広告業界のM&A動向と最新事例

広告業界のM&A動向と最新事例

広告業界においては、売手・買手双方の事業の成長発展を目的としたM&Aが活発に行われております。

この記事では、広告業界におけるM&A動向、M&A成功に向けたポイント、最新事例について解説します。

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広告業界の現状

ここでは広告業界の市場動向、取巻く環境について解説します。

広告業界の市場動向

国内総広告費は7兆円以上、直近10年(2014年~2023年)の年間平均成長率は約1.9%と広告市場全体は緩やかに成長しております。

広告市場における主たるトピックとして以下4つ解説します。

  1. 広告市場全体
  2. インターネット広告費が市場を牽引
  3. マスコミ4媒体の広告市場は縮小傾向
  4. 今後の課題

1.広告市場全体

広告市場規模は、1995年 は5.4兆円に対し、2023年は7.3兆円まで拡大しております(電通「日本の広告費」より)。

2020年はコロナ禍における広告費抑制を背景に減少しているものの、以降は各種イベントの再開、インターネット広告費の拡大により、再び成長軌道に転じています。

2.インターネット広告費が市場を牽引

インターネット広告費の成長が市場全体を牽引している構造となっております。インターネット広告費は2,000年代より急拡大に転じ、現在の市場は3.3兆円、総広告費全体の約50%を占めるまで成長しております。(直近10年における年間平均成長率は約14%)

とくに「検索連動型広告」「ビデオ(動画)」広告の成長が、インターネット広告費拡大に大きく寄与していることが特徴として挙げられます。

3.マスコミ4媒体の広告市場は縮小傾向

マスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・地上波テレビ)については、1995年時点で約3.5兆円の市場規模があったものの、2023年時点では2.3兆円まで減少、インターネット広告費の成長と反比例し、市場は縮小傾向にあります。

なお、それぞれの媒体の直近10年における市場成長率は下記の通り。

   ・新聞  :▲5.9%

   ・雑誌  :▲8.2%

   ・ラジオ :▲1.2%

   ・テレビ :▲1.3%

4.今後の課題

広告業界全体での市場は拡大傾向にありますが、業界として様々な課題が存在します。

主たる課題として以下2つ解説いたします。

1.広告業界は過渡期 
広告業界は従来業界を牽引していたマスメディア媒体から、インターネット、SNS、動画配信サービスなどへの転換期にあります。

活字離れや読書層の減少、若年層によるテレビ離れなど、旧来型のマスメディア媒体を強みとしている広告会社においては、今後事業の再構築が避けては通れません。

    2.少子高齢化の進行
    広告費は国民の消費額との連動制が高いことから、少子高齢化の進行は業界全体の成長停滞に直結します。

    少子高齢化の解消又は一人当たり消費額の増加は長期の時間軸を要するため、業界全体で避けては取れない課題と言えます。

     

    広告業界におけるM&A

    広告業界においては、企業規模に関係なく活発なM&Aが行われている業界の一つです。

    各社成長が著しいインターネット広告分野の事業強化やノウハウの獲得や、専門領域の異なる広告事業会社、人材確保を目的としたM&Aのほか、異業種から広告業界への参入を目指したM&Aも盛んに行われております。

    <昨今のM&A事例(抜粋)>

    日付買手売手企業
    会社名売上高会社名売上高
    2025/1予定ノバセル㈱28.5億円㈱オールマーケ非公表
    2024/10/22㈱フリークアウト517億円㈱VAAS非公表
    2024/10/15オリコン㈱48億円㈱新旭非公表
    2024/10/1セーラー広告㈱20億円㈱メディア・エーシー2.3億円
    2024/10/1㈱KYORITSU400億円㈱東京アド35億円
    2024/9/12㈱カルテットコミュニケーションズ35億円㈱MARKELINK非公表
    2024/8/1売れるネット広告社㈱7.5億円JCN7.7億円
    2024/3/29TOPPAN㈱1兆6782億円㈱ココラブル非公表
    2024/2/7売れるネット広告社㈱7.5億円グルプス5.3億円

    広告業界におけるM&Aメリット

    広告業界において、M&Aを活用した場合の主なメリットは以下の通りです。

    売り手側のメリット

    1.後継者問題の解決
    2.個人保証・担保提供の解消

    3.従業員の雇用継続           
    4.売却利益の獲得

    5.事業の成長発展

    買い手側のメリット

    1.新たな顧客層・販路拡大

    2.提供サービスの拡充
    3.優秀な人材の獲得

    4.マスメディア依存の経営体制からの脱却

    5.新規エリアへ進出

    広告業界の売却相場

    ここでは、広告業界の売却相場について解説します。

    コスト・アプローチから見た相場

    中小企業におけるM&Aにおいては、時価純資産+営業権(EBITDA×2~4年程度)により算定される価格が一般的な取引レンジとなっております。

     (例)時価純資産300百万円 / EBITDA30百万円

        300百万円+(30百万円×中央値3年)=390百万円

    マーケット・アプローチから見た相場

    類似企業比較法における類似上場企業の財務数値を比較して算定することにより、売却価格相場を把握することも可能となります。

    主にEV/EBITDA倍率(事業価値÷EBITDA)を採用することが一般的であり、直近における広告業界のEV/EBITDA倍率中央値は約7倍となっています。

      (例)EBITDA30百万円 / 非事業用資産150百万円 / 無借金

         EBITDA30百万円×7倍+非事業用資産150百万円=360百万円

    ※売却価格の相場・計算方法は「会社の売却価格・相場を知ろう!会社売却を進める前に必須の知識を徹底解説!」にて詳細に解説しておりますので、ご参照ください。

    広告業界のM&A事例

    ここでは、広告業界における最近のM&A事例を4つご紹介します。

    【事例①】ノバセルによるオールマーケの子会社化

    ラクスルグループであるノバセル㈱は、2024年10月22日付で業界特化型の独立系ウェブ広告運用会社である㈱オールマーケ(東京都)の全株式を取得し子会社化することについて決議した。(2025年1月末の取得を予定)

    オールマーケは国内トップレベルの広告運用のプロ集団、特にWEB広告運用で優れた実績を持ち、広範な業務対応力と専門性を備えている。

    ノバセルはデータを活用したマーケティングソリューションを幅広く展開している。

    ノバセルにおけるデジタルマーケティング領域での支援体制強化と独自の戦略立案から広告運用まで一貫したサービス提供が可能となることで更なる成長に寄与すると考え、子会社化の意思決定をした。

    【事例②】フリークアウトによるVAASの子会社化

    ㈱フリークアウトは、2024年10月22日付で広告主・メディア双方へHigh Impact広告ソリューションの導入支援を行っている㈱VAAS(東京都)の発行済株式100%を取得し、完全子会社化した。

    VAASは日本市場においていち早くHigh Impact広告ソリューションの導入を開始した企業の一つ、5年以上に渡る経験をもとに、多くの広告主、代理店、媒体社へのHigh Impact広告ソリューションの導入を成功へと導いた。

    フリーアウトは、インターネット広告のリアルタイム取引を日本で初めて事業化したマーケティングテクノロジーカンパニー。

    現在インターネット広告市場では、ターゲティングの課題や、ユーザー不快と思うフォーマットが乱立している課題が顕在化しており、優良媒体社の新たな収益の形が求められている。オープンインターネット広告市場におけるプレゼンスを強化し、広告主や媒体社に対してさらなる付加価値の提供を図るべくM&Aを実施した。

     【事例③】オリコンによる新旭の子会社化

    オリコン㈱は、2024年10月15日付で広告企画制作を手掛ける㈱新旭(東京都)の発行済株式100%を取得し、子会社化した。

    新旭は少数精鋭の広告企画制作会社、大手クライアントのスポーツイベントのプロモーション案件やデジタルコンテンツ制作など、広告制作に関する豊富なノウハウを有している。

    オリコンは、顧客満足度調査事業、ニュース配信・PV事業、音楽・映像・書籍のデータサービス事業を展開。

    新旭の持つノウハウを活用することで、オリコンの顧客満足ランキング対象企業に対し、テレビ広告や動画広告をはじめとする多様かつ付加価値の高いサービスメニューの提供が図れると考え、M&Aを実施した。

    【事例④】セーラー広告による㈱メディア・エーシーの子会社化

    セーラー広告㈱(以下「セーラー社」)は2024年10月1日で、広告事業を手掛ける㈱メディア・エーシー(以下「メディア社」)の発行済株式100%を取得し、完全子会社化した。

    セーラー社は、中国四国エリアを中心に広告事業を展開している。

    メディア社(高知県)は、マス媒体のほか販促ツールデザインやホームページ制作のほか、Webマーケティングなどを手掛け、安定した顧客基盤を確保しているものの、更なる成長を図るためには営業力や企画提案力の強化が不可欠であると認識していた。

    セーラー社が有する営業力・企画提案力と、高知県中心に顧客基盤を有するメディア社が融合することで、「高知エリア」におけるシェア拡大、高品質なサービス提供が可能となると考えM&Aを実施した。

    【事例⑤】KYORITSUによる、東京アドの子会社化

    ㈱KYORITSUは、2024年10月1日付で広告代理業を営む㈱東京アドの発行済株式100%を取得し、子会社化した。

    KYORITSUは「情報デジタル事業」「プリントメディア事業」「環境事業」「BPO事業」を手掛けている。「情報デジタル事業」が中核事業であり、クライアントとのパートナーシップ強化による購買履歴や個人情報を活かしたDXプロモーションの拡大に加え、電子書籍データ制作の拡大やIP事業等デジタル媒体の創出による収益拡大を目指している。

    東京アドは新聞媒体、テレビ、ラジオ等を中心に通信販売広告を主力に広告代理事業を展開している。

    東京アドを子会社化することで、通販商品に対するマーケティングから紙やデジタルといったあらゆる販促媒体の製造が可能となり、販促における川上から川下までのトータル販促サービスの提供が実現できると考え、M&Aを実施した。 

    広告業界でM&Aを行う際のポイント

    広告業界でM&Aを行う際のポイントを売り手側と買い手側それぞれ解説します。

    売り手側のポイント

    1.事業成長の実現

    売手企業が、売却後に一層の事業成長の実現が期待できるか否かが重要なポイントとなります。

    期待できる買手であれば、双方シナジーが高いことが想定されるため、高値での売却に繋がります。

    2.専門家のサポート

    M&Aにおいては多岐に渡る専門知識が必要となります。

    M&Aを成功させるためには、信頼できる専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

    買い手側のポイント

    1.シナジー効果についての調査

     買手企業、売手企業双方にどのようなシナジー効果が期待できるかを精査することが重要です。

    その為買収対象会社の事業特性を把握することが欠かせません。事業特性の把握を行い、M&A戦略との整合性を踏まえたうえで、案件を進めていくことが重要と言えます。

    2.人材流出

    買い手側にとってのM&Aの重要な目的の一つに人材確保があります。

    会社の売却をきっかけに従業員が退職してしまうこと避けるためには、従業員への丁寧な説明、PMI(M&A後の統合プロセス)が重要なポイントとなります。

    従業員へ説明するタイミングについては、売り手側、アドバイザーも含め、慎重に検討しましょう。

    まとめ

    出版会社の売却・買収などをお考えの際は、まずM&A専門家へ相談しましょう。

    専門家は、豊富な知識、経験をもとに、相談者にマッチする相手先の探索や、M&A手法の件・交渉サポートを行います。

    弊社は広告業界におけるM&Aに精通しているほか、財務デューデリジェンスにもご対応可能ですので、是非お気軽にご相談ください。

    この記事の執筆

    シニアアドバイザー清水洋伸

    専門領域:M&Aアドバイザリー、財務・税務DD、財務コンサルタント、資金調達支援等

    大学卒業後、大手銀行に入行。

    M&A、事業承継、ファイナンス等法人ソリューション業務に約13年間従事。御堂筋税理士法人に入社後は、M&Aアドバイザリー業務を軸に、円滑な事業承継ならびに戦略的な企業成長を実現していくうえでのサポートを実施している。お客様に寄り添った伴走型支援を信条とし、お客様の成長・発展に貢献して参ります。

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