クリーニング業界のM&A動向と最新事例

クリーニング業界のM&A動向と最新事例

クリーニング業界においては、後継者不在、経営再建、経営の安定化を目的としたM&Aが活発に行われております。

この記事では、クリーニング業界におけるM&A動向、M&A成功に向けたポイント、最新事例について解説します。

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クリーニング業界の現状

ここではクリーニング業界の市場動向、取巻く環境について解説します。

業界の定義

この記事におけるクリーニング業界はクリーニング事業を営む企業郡を対象としております。

主に法人向けに繊維製品の貸与、回収、洗濯を繰り返すリネンサプライ事業は除外してります。

業界の概要

クリーニング業は、クリーニング業法に基づいて定めらえたクリーニング師という国家資格が必要となります。

事業形態は「クリーニング所」と「取次所」の2種類に分類され、特徴は下記の通りです。

クリーニング店店舗と設備(洗濯機や脱水機など)が備わっていて、クリーニング師を置く必要がある
取次所洗濯物の受付・引渡しのみを行う。 店舗を有さず宅配のみで営業することが可能、FCに加盟することが多い。

クリーニング業界の市場動向

矢野経済研究所の調査によると、クリーニング関連市場(クリーニング店、コインランドリー、取次店)における市場規模(売上高ベース)は2022年で2,713億円と推定されております。

2018年が3,425億円であり、2018年~2022年の5年間の年間平均成長率は▲5.8%と市場は縮小傾向にあります。なお、「コインランドリー」及び「無店舗・宅配型」は緩やかに成長している一方、クリーニング店が著しく減少している構造となっております。

近年、若年層を中心にコインランドリーを利用する人数が増加しており、在宅勤務などの働き方の多様化、家庭用洗濯洗剤の高機能化、衣類の素材変化などにより、洗濯を外注する機会やメリットが低減している為、クリーニング店の需要が減少していると推察され、今後も厳しい環境が継続することが想定されます。

出典:クリーニング業界市場規模(矢野経済研究所 「クリーニング関連市場に関する調査を実施(2023年)

   一世帯あたりのクリーニング支出額(総務省 家計調査)

   クリーニング施設数推移(厚生労働省 「衛生行政報告例」

クリーニング業界における課題

クリーニング業界においては、「クリーニング需要の衰退+担い手不足」が最大の課題であると考えられます。

上記の通り、クリーニング需要は減少傾向にあり、今後も厳しい環境が想定されます。

加えて、担い手である経営者の高齢化が進むとともに、次世代の担い手が不足していることが業界全体の課題であると言えます。

(構成労働省「クリーニング業の実態と経済改善の方策」によると、クリーニング店を営む事業所の半数以上が個人経営であり、60歳以上の経営者が業界全体の7割、経営者の7割が後継者不在。営業年数20年未満の事業者は全体の約3%に留まる為、新規開業も少ない) 

クリーニング業界におけるM&A

クリーニング業界においては、「後継者不在」「経営環境の悪化」を理由に、中小規模のクリーニング会社が大手の傘下となることが盛んにおこなわれております。

資本力のある大手クリーニング会社が既存エリアにおける市場浸透戦略をベースに中小規模のクリーニング会社を譲受するケースが最も多い傾向にありますが、中には新たにクリーニング事業へ参入するためのM&Aも展開されています。

クリーニング業界におけるM&Aメリット

クリーニング業界において、M&Aを活用した場合の主なメリットは以下の通りです。

売り手側のメリット

1.後継者問題の解決
2.個人保証・担保提供の解消

3.従業員の雇用継続

4.取引先との取引維持

5.経営の安定・拡大

買い手側のメリット

1.優秀な人材を確保できる

2.店舗統廃合による、経営の効率化

3.新規エリアへの進出

4.ノウハウ・技術力の継承

クリーニング業界の売却相場

クリーニング業界における売却相場は譲渡資産・負債(株式譲渡の場合は純資産)に加え営業利益もしくはEBITDA(営業利益+減価償却費)×2年~3年程度で取引先されることが多いです。

他の業界との違いは、評価手法でマーケット・アプローチによる類似業種比較法(類似上場企業倍率)が使用されないケースが多いことです。理由としては、上場しているクリーニング会社が少ない点、また上場会社においても赤字である会社も存在する為、倍率の試算が難しいといったことが挙げられます。

その為、クリーニング業界においてはコスト・アプローチ(時価純資産法等)を中心に評価されます。

なお、理論的に売却価格を算定する方法は別記事「会社の売却価格・相場とは?」で詳しく解説しておりますので、こちらをご参照ください。

クリーニング業界のM&A事例

ここでは、クリーニング業界における最近のM&A事例を3つご紹介します。

【事例①】センコーグループホールディングスによるダイヤクリーニングの子会社化

センコーグループホールディングス㈱(以下「センコー」)は、ダイヤクリーニング㈱(岡山)の全株式を取得し、2021年11月9日にグループ化した。

ダイヤクリーニングはクリーニング業界で売上10位前後、岡山県を中心に中四国エリア、兵庫県西部に約200店舗展開、地域に密着した強い事業基盤と高収益体質を築いる。

センコーグループは物流がコア事業であるが、多角化を推進しており、人々の生活をサポートする事業(ライフサポート事業)も展開している。

ダイヤクリーニングのグループ化により、ライフサポート事業における事業領域を拡大するとともに、グループ各社との連携による新商品開発などが期待できるとして、M&Aを実施した。

【事例②】「きょくとう」による「ふなこし」「かりん」の事業譲受

㈱きょくとう(福岡、上場)は、㈱ふなこし(福岡)、㈱かりん(福岡)から、両者の事業の一部である福岡県に展開するクリーニング取次所等を譲り受けた。(譲り受けた取次所等は、福岡県で48店舗)

福岡県におけるきょくとうの営業基盤を一層固めることを目的にM&Aを実施した。

【事例③】力こぶホールディングスによる一連のM&A

北関東を中心にクリーニング業を展開する㈱ユーゴーの持株会社である力こぶホールディングスは、2018年に㈱タマサービス(クリーニング事業/茨城県)、2019年に沼崎洗化(クリーニング事業/茨城県)の株式を取得し、子会社化した。

力こぶホールディングスは、クリーニング事業主の高齢化に伴う事業承継の受け皿となるため、同エリアにおけるクリーニング事業会社を対象に積極的なM&Aを展開している。

基本方針は、地域に根差したブランドと社員、お客様の幸せを追求。ブランド再構築、マーケティング活動、人材育成、組織再構築、財務改善を行うことで、地域ブランドを一層輝かせることを目的にM&Aを実施している。

クリーニング業界でM&Aを行う際のポイント

クリーニング業界でM&Aを行う際のポイントを売り手側と買い手側に分けて解説します。

売り手側のポイント

1.事業成長の実現

売手企業が、売却後に一層の事業成長の実現が期待できるか否かが重要なポイントとなります。

期待できる買手であれば、双方シナジーが高いことが想定されるため、高値での売却に繋がります。

また、事業成長の実現が図れることは従業員の処遇改善や取引先の成長にもつながることが期待できます。

2.専門家のサポート

M&Aにおいては多岐に渡る専門知識が必要となります。

M&Aを成功させるためには、信頼できる専門家にサポートを依頼することをおすすめします。

買い手側のポイント

1.シナジー効果についての調査

 買手企業、売手企業双方にどのようなシナジー効果が期待できるかを精査することが重要です。

得意としているサービス領域、店舗数・商圏、業務フローの効率化やスケールメリットによるコスト削減が実現できるか等、具体的かつ定量的に分析・検証することが重要と言えます。

2.財務デューデリジェンスの実施

クリーニング店は、製造業(工場)と小売業(店舗)の二面性を持つ事業会社です。

小売業の側面からは顧客推移、単価推移の検証が必要となる他、製造業としての側面からは機械設備の老朽化、今後の設備投資等による投資キャッシュフローを検証することが重要と言えます。

また、PMIの観点からも店舗別損益の検証は必要不可欠であると考えられます。

まとめ

クリーニング会社の売却・買収などをお考えの際は、まずM&A専門家へ相談しましょう。

専門家は、豊富な知識、経験をもとに、相談者にマッチする相手先の探索や、M&A手法の件・交渉サポートを行います。

弊社はクリーニング業界におけるM&Aに精通しているほか、財務デューデリジェンスにもご対応可能ですので、是非お気軽にご相談ください。

この記事の執筆

シニアアドバイザー清水洋伸

専門領域:M&Aアドバイザリー、財務・税務DD、財務コンサルタント、資金調達支援等

大学卒業後、大手銀行に入行。

M&A、事業承継、ファイナンス等法人ソリューション業務に約13年間従事。御堂筋税理士法人に入社後は、M&Aアドバイザリー業務を軸に、円滑な事業承継ならびに戦略的な企業成長を実現していくうえでのサポートを実施している。お客様に寄り添った伴走型支援を信条とし、お客様の成長・発展に貢献して参ります。

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