食品スーパー業界の動向とM&Aを行う際のポイント等につき解説

食品スーパー業界の動向とM&Aを行う際のポイント等につき解説

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食品スーパー業界とは

まずは、食品スーパー業界の定義や商流、現状について解説します。

食品スーパー業界の定義

食品スーパーとは、食料品を中心に販売するスーパーマーケットのことで、経済産業省の業態分類によると、食品の売上構成被比率が70%以上かつ売り場の面積が250㎡以上のスーパーマーケットと定義されています。

食料品のほかにも日用品等も販売する小売店であり、日本国内における消費者の生活インフラとして機能しています。

食品スーパー業界の商流

(出典:Uzabase作成資料を基にリガーレにて再編加工)

本業界は、地域密着型の独立系中規模チェーンが優位になるとされてきましたが、一般食品の仕入れやPB商品開発という点ではスケールメリットがあると考えられ、流通大手の傘下入りや、ボランタリーチェーン(共同仕入れ機構)に加盟し、共同仕入れなどによる原価の低減等を実現しています。

食品スーパー業界の現状

次に、食品スーパー業界の2023年度の動向について解説します。

業界の動向について(2023年度)

全国スーパーマーケット協会「(2024年版)スーパーマーケット白書」によると、店舗数は全国で23,078店舗(うち大型店1,796店舗、中型店15,973店舗、小型店5,309店舗)で販売総額は約25.5兆円にものぼり、前年比103.7%と順調に推移しました。

2023年度のカテゴリー別動向として、最も前年比伸び率が高かったのは乳製品やパン等の日配カテゴリーとなっています。

値上げ幅に比べ買い上げ点数の減少幅が小さく、結果顧客単価が上昇した結果になり販売額が底上げされました。

次いで惣菜カテゴリーの伸び率が高く、エネルギー高騰や食用油・調味料等の値上げにより揚げ物を筆頭に一般家庭での調理を避ける傾向が続いたほか、各種イベントの再開も追い風となりました。

青果も年度の前半は前年相場高騰の反動を受けるも、後半は相場高騰傾向で一品単価が上昇したことにより、販売額が底上げされました。

一方で、これまで内食需要を支えてきた畜産カテゴリーは、相場高騰の影響をうけ買い上げ点数が減少し、伸び悩む結果となりました。

図:2023年スーパーマーケット総売上高 前年比

図:2023年スーパーマーケット販売額 カテゴリー別前年比と2019年比

(出典:2024年版スーパーマーケット白書)

食品スーパー業界が抱える問題

続いて、食品スーパー業界が抱える問題について解説していきます。

経営コストの上昇

本業界の経営コストについては様々な世界情勢または国内情勢に影響を受けており、小麦やその他の仕入れ価格の高騰、輸送コストの上昇、為替による影響、水道光熱費の高騰等、様々な要因が経営コストに大きな影響を及ぼしています。

それらのコストを吸収するべく、セルフレジの導入による人件費の削減や、節電節水による水道光熱費の削減、仕入れ先の見直し、DX推進による作業効率化等が求められています。

人手不足

本業界に限ったことではないですが、本業界も漏れなく人手不足の状況が続いており、人手不足を一因とした閉店や営業時間の短縮などの事例も発生しています。

人件費の高騰

全国の最低賃金が、物価上昇の背景もあり、年々大きな引き上げ幅となっています。

特にパート、アルバイトを中心に人員構成される本業界において、最低賃金の上昇は、スーパーマーケットの運営に非常に大きな影響を与えています。

年収の壁

最低賃金の上昇は「年収の壁」という別の問題にも直面しやすくなり、食品スーパーを運営する際の大きな足かせとなっています。

賃金上昇に伴い、年収の壁である103万円(または106万円、130万円)までに抑えようとすると、労働時間の短縮をせざるおえないケースが多く発生しています。

実態としては、パートタイムで働く多くの方々が、扶養内での労働を選択している現状において、「年収の壁」が人手不足をもたらす原因の一つであることから、年収の壁支援強化パッケージにとどまらないより現実的な対応を望む声が強くよせられています。

キャッシュレス決済の普及

日本国内では普及が遅れているとされてきたキャッシュレス決済ですが、新型コロナウイルス問題に起因する「非接触」ニーズの高まり等をうけ、徐々に消費者の利用が増加しています。

キャッシュレス決済の導入によるメリットも当然あることながら、キャッシュレス決済事業者への手数料が、利益率を圧迫する大きなデメリットとしてあげられます。

今後も引き続き公共インフラ整備の一環として一層のキャッシュレス化の推進が想定されますが、政府からキャッシュレス決済事業者、金融機関等への手数料率引き下げに向けた働きかけもセットで必要になると言えるでしょう。

食品スーパー業界におけるM&A活用のメリット

上述の通り、様々な問題を抱える食品スーパー業界ですが、M&Aの活用により解決できる問題も少なくありません。

M&Aを活用したメリットの一例は以下の通りです。

売手側のメリット

  • 競争力の維持
  • ボリュームディスカウントによるコスト削減
  • PB商品の充実
  • 後継者問題の解決
  • 会社の存続・発展
  • 従業員の雇用維持(場合によっては処遇の改善)
  • 人材確保
  • 個人保証や担保の解消
  • 創業者利益・売却益の獲得

買手側のメリット

  • 新規エリア・新規顧客の獲得
  • 事業領域の拡大、サービスの拡充
  • 人材確保
  • ボリュームディスカウントによるコスト削減

食品スーパー業界でM&Aを行う際のポイント

食品スーパー業界でM&Aを行う際のポイントとしては、下記のような点が考えられます。

収益性の改善を実現する

元来、食品をメインに取り扱う本業界は、利益率が低い傾向にあり、人口減少や競争激化という厳しい環境の中でいかに利益を確保するかが課題となっています。

そのためには、M&A等も活用し、スケールメリットを生かした共同仕入れや共同配送またはプロセスセンターの活用、セルフレジの導入、AIによる適正価格の設定などに取組み、収益性の改善が実現できるか、がポイントとなります。

商品戦略の明確化

消費者ニーズの変化やECの普及という需要側の変化に加え、業務用スーパー等のディスカウントストアやドラッグストアの食品扱い増加、コンビニのファミリー向け商品の拡充等、年々競合事例も増加傾向にあります。

こうした状況に対して、自社の差別化戦略として「品質」を挙げる企業が約半数にものぼっており(スーパーマーケット年次統計調査による)、鮮度や独自性といった商品戦略を掲げて顧客への訴求を図っていることがわかります。

裏を返すと、安かろう悪かろうでは伸び悩む時代になっているとも言え、M&Aを検討する際には品質の維持向上といった観点からも、ブランド価値が毀損することのないよう慎重に判断する必要があると考えられます。

財務内容の確認

多種多様な商品が様々なルートで流通する業界であるうえに、一定の廃棄も発生するため、商品を種類別に採算管理することも難しく、特に月次ベースにおいては正確に把握できていないケースも多く見られます。

そのためには、買収前にデューデリジェンス(買収監査)をしっかりと行い、対象会社のキャッシュポイントはどこか、得意なカテゴリーは何か等見極めることが重要となってきます。

まとめ

食品スーパー業界において会社の売却等をお考えの際は、まずはM&Aの専門会社へ相談しましょう。

専門家は、豊富な知識、経験をもとに相談者にマッチする相手先の探索や、M&Aの手法の検討を行います。

会社の強み、財務状況、相手先の希望などを整理したうえで相談するとスムーズです。

リガーレは、食品スーパー業界のM&Aにも精通しているほか、財務・税務デューデリジェンスや財務コンサルティングにも対応しておりますので、是非お気軽にご相談ください。

この記事の執筆

取締役COO青山佳敬

専門領域:マネジメント、M&Aアドバイザリー

地方銀行入行後、法人向けファイナンス業務を担当。

その後、監査法人系M&Aアドバイザリーファームへ出向し、以後長期に渡りM&Aアドバイザリー業務に従事。国内ミドルマーケット案件を中心に多くの案件に責任者として関与、事業会社の後継者問題解決・企業価値向上に寄与。

2021年御堂筋税理士法人グループに入社、2022年からは株式会社リガーレとしてM&Aアドバイザリー業務を中心としたソリューションサービスを提供している。

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