旅行代理店業界の動向とM&Aを行う際のポイント等について解説!

旅行代理店業界の動向とM&Aを行う際のポイント等について解説!

旅行業界においては、後継者不在、経営再建、経営の安定化を目的としたM&Aが活発に行われております。

この記事では、旅行代理店業界におけるM&A動向、M&Aのポイント、最新事例について解説します。

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旅行代理店とは

旅行代理店は、交通・宿泊・その他の旅行商品を仲介もしくは自社で企画、催行して販売する事業を行う会社のことを指します。

旅行の分類

旅行商品を代理店自ら企画するか、旅行者側で具体的な内容まで決めているかによって、商品の分類分けがなされます。

具体的には、募集型企画旅行・受託型企画旅行・手配旅行の3つに分かれ、それぞれの違いは下記の通りです。

分類内容具体例
募集型企画旅行旅行会社が企画、旅程や料金などを設定し参加者を募集する形式パッケージツアー
パック旅行 など
受注型企画旅行旅行者側が企画し、代理店に依頼し計画・提案・実施する形式。旅行者側の希望により内容を変更できる点が募集型との違い。修学旅行
社員慰安旅行 など
手配旅行代理店は、旅行サービスの手配のみを受託する。個人旅行など

(出典:Uzabase作成資料を基にリガーレにて再編加工)

旅行業界のバリューチェーン

旅行代理店は、それぞれの業務領域の範囲によって、大きく4つのプレイヤーに分類されます。

まずは、旅行に関する一連の業務をトータルに手がける総合旅行会社で、JTBやエイチ・アイ・エスといった大手旅行会社がこれらに当たります。

続いて、パッケージツアーの企画開発を行うホールセラー、交通機関のチケットや他社企画されたパッケージツアーの販売を行うリテーラー、他旅行会社から旅行素材の手配・予約を請負うツアーオペレーター(ランドオペレーター)があります。

また、近年ではインターネット上での旅行予約も一般的になっており、Webサイト上で旅行商品を販売するオンライン旅行会社(OTA)の存在も旅行代理店にとっては脅威となっております。

(出典:Uzabase作成資料を基にリガーレにて再編加工)

必要となる許認可

本業界は旅行業法に則った事業運営が必要であり、旅行代理店の事業を行うには、国土交通省観光庁または都道府県知事による許認可登録を取得する必要があります。

また、旅行業者の業務範囲は、営業資格の種類により決まっております。

旅行業者業務範囲業者数
営業資格海外募集型国内募集型受注型手配旅行 
第1種旅行業609
第2種旅行業×3,092
第3種旅行業×5,148
地域限定旅行業×687

出典:観光庁『各都道府県の旅行業者・旅行業者代理業者・旅行サービス手配業者数一覧』

※業者数は2024年4月1日時点

※△は国内でも隣接市町村等に限定される

旅行代理店業界の現状

市場環境

観光庁のデータによると、2023年度の主要旅行業者の取扱い額は、3兆6,338億円に上り、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて大幅に落ち込んだ2020年以降、徐々に回復を続けています。

また、コロナの終息及び円安の影響で、海外からのインバウンド需要が大きく増加し、訪日観光客により国内観光業全体の活性化に繋がっています。

それでも2023年度旅行取扱高は、コロナ前2019年度比の8割程度と回復途上の状況であるが、今後さらに急伸していくことが期待されます。

※出典:観光庁『主要旅行業者の旅行取扱状況年度総計』

※Uzabase作成資料

インターネット経由での取引拡大

デジタル化の流れは、旅行業界においても著しく進んでいます。

旅行サービスの販売におけるインターネット経由での取引が年々増加しており、今後ますますオフラインからオンラインへの移行が進んでいくと考えられます。

ExpediaやBooking.com、楽天トラベルといったOTA(オンライン旅行代理店)の台頭により、従来の対面販売による旅行代理店は価格競争に弱く、ビジネスモデルの変化が必要になっています。

実際、大手を中心にネット販売に対応した営業・販売体制へのシフトチェンジが進んでいます。

また今後さらに技術革新が進むと、AIを活用したサービス提供なども行われていくことが予想されます。

AIを活用して個人ごとの趣味趣向などに合わせた旅行プラン作成やチャットボットでの顧客対応など、これらが主流になるとより旅行代理店の競争力は弱まり、差別化が難しくなると考えられます。

旅行業者の取引シェア寡占化

国土交通省によると、全国の旅行業者数は約1万社あると公表されています。

一定の財務条件をクリアすると許認可の取得が可能であることから、参入業者が比較的多いことが特徴となります。

一方で、大手に属するのは鉄道会社や航空会社、メディア系列の会社が多く、取扱額の上位5社グループで全体の7割のシェアを取っており、大手の寡占化が進んでいる業界であるとも言えます。

このように業界全体として、オンラインへの移行が進み価格競争やサービス競争が激しくなっていく中で、大手による中堅企業のグループ化や同エリア内での店舗統廃合など経営合理化が進められています。

中小企業においても、従来通りのサービス展開だけではますます厳しくなる中で、どのような経営戦略を立てるかが非常に重要な課題となっております。

M&A活用のメリット

前述の通り、今後ますます旅行代理店業界の競争環境は激しくなることが考えられます。

その中で、M&Aで他社との協業を図ることは、有効な手段の一つになります。

ここでは、M&Aにより想定されるメリットの例をいくつか挙げてみます。

売手側のメリット

  • 競争力の維持
  • ネームバリューやブランド価値の獲得
  • システム投資や販促、管理にかかるコストの削減
  • パッケージや法人向けなどサービスラインナップの強化
  • オンライン販売強化
  • 大手の看板や採用ノウハウを活用した人材確保
  • 後継者課題の解決や会社の存続・発展
  • 従業員の継続雇用(場合によっては、処遇の改善)
  • 金融債務やその他契約などにおける個人保証や担保の解消
  • 株式売却による創業者利益・売却益の獲得

買手側のメリット

  • 未開拓エリアや海外、新規顧客の開拓
  • 特徴あるサービスやニッチ領域の獲得

(インバウンド向け、法人顧客向け、スポーツ・イベント向けツアーなど)

  • 優秀な人材の確保

旅行代理店におけるM&A事例

旅行代理店業界では、新型コロナの影響を受け経営状況が急激に苦しくなった企業も多く、M&Aは活発化しております。

大手・中堅同士での提携やオンライン事業者・旅行関連システム・アプリ開発会社のM&Aなど事例も増えてきています。

近年では、以下のような事例があります。

アジャイルメディア・ネットワーク<6573>、旅行代理店のインプレストラベルを買収

アジャイルメディア・ネットワーク社は、株式会社クロノス・インターナショナルと共同で、株式会社インプレストラベルの全株式を取得し、新規事業として旅行業を開始しました。

買手グループは、「世界中の“好き”を加速する」をビジョンに掲げて、ファンの育成や活性化を目的とした中長期のマーケティングコミュニケーション支援を様々な企業に提供してきました。

売手企業は、三重県に所在する旅行代理店となります。

国内外の各種旅行商品を販売するための許認可を保有しております。買手企業とのファンマーケティング施策の一つとして、体験ツアー企画などとのシナジー効果が非常に大きく、M&Aが実現しました。

「ジャパネット」が旅行会社のゆこゆこを子会社化

通信販売大手のジャパネットホールディングスは、温泉地の宿泊仲介事業を展開するゆこゆこを子会社しました。

ゆこゆこは宿泊予約事業を20年以上営んできた実績があり、取引先の宿泊施設数は約3000軒、会員数は2024年6月時点で880万人を超えています。

アナログとデジタルを組み合わせたサービスが特徴で、50代以上の顧客が8割を占めています。

ジャパネットグループが持つ通販事業のノウハウと、ゆこゆこの宿泊施設への営業力や顧客基盤を融合させることで、国内旅行の新たな価値を創出するのが狙いになります。

アドベンチャー<6030>、ランドオペレーター事業のアヤベックスを子会社化

アドベンチャーは、インバウンド(訪日観光客)の旅行手配や各種サービス予約などランドオペレーター事業を手がけるアヤベックスの全株式を取得しました。

アドベンチャーは総合旅行予約サイト「skyticket」の運営を主力事業としています。

インバウンド需要の急速な回復・拡大を見込み、両社間での相互補完などを進め、今後の戦略として国内旅行事業を引き続き強化したうえで、東南アジアをはじめとする海外への進出を予定しています。

ゴルフ場・ホテル運営の太平洋クラブ、旅行代理店業のジェットアンドスポーツの一部株式を取得

株式会社太平洋クラブは、旅行代理店業の株式会社ジェットアンドスポーツの株式を一部取得いたしました。

ジェットアンドスポーツ社との協業で、プレー予約や航空券手配に加えて送迎・宿泊・レストラン・現地ガイド等のサービスまで対応可能となります。

ジェットアンドスポーツ社は国内外のゴルフコースの旅行代理業を専門としており、多くのゴルファーからの信頼を得ています。

両社の連携により、太平洋クラブ会員の利便性向上、満足度向上につながることが想定されます。

まとめ

今回は、旅行代理店業界における動向とM&Aのポイントをまとめました。

会社の買収・売却等をお考えの際は、まずはM&Aの専門会社へ相談しましょう。

専門家は、豊富な知識、経験をもとに相談者にマッチする相手先の探索や、M&Aの手法の検討を行います。

会社の強み、財務状況、相手先の希望などを整理したうえで相談するとスムーズです。

リガーレは、あらゆる業界のM&Aに精通しているほか、財務・税務デューデリジェンスや財務コンサルティングにも対応しておりますので、是非お気軽にご相談ください。

この記事の執筆

アドバイザー中川雄太

専門領域:M&Aアドバイザリー

経営者の後継者問題や企業の成長戦略を支援するM&Aアドバイザーという職種に魅力を感じ、大手M&A仲介ブティックに入社。主に中堅中小企業オーナーに対するアドバイザリー業務に従事し、建設業や卸売業など様々な業種において計10件以上のM&A成約支援に携わる。M&Aのみに留まらず幅広く事業承継支援を行いたいという想いからリガーレに入社。M&A・事業承継を通じて企業の永続的な発展を支援する。

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