株券発行会社・不発行会社とは?株券発行会社より不発行会社の方がM&A・事業承継に有利な理由
会社の機関設計において株券の発行会社と不発行会社という言葉が出てきます。
文字通り株券を発行する会社と発行しない会社という意味になりますが、M&Aや事業承継において避けては通れない重要確認ポイントでもあります。
ここでは、株券の発行会社と不発行会社について内容を確認し、M&Aや事業承継において株券がネックになる理由などを解説していきます。
株券発行会社と不発行会社とは
株券発行会社と株券不発行会社について解説していきます。それぞれにメリットやデメリットがあります。
株券とは?株券と株式の違い
まず始めに、株券と株式の違いを押さえておきましょう。
- 株式とは…株式会社へ出資した株主であることを表するもの
- 株券とは…株式会社における株主の地位を表した有価証券
株式会社に出資し株式を所有した人を株主と言います。株主は株式を持っており、保有している株式の種類と数に応じて株主総会での議決権や、配当金などを受け取れます。
この株式を紙に印刷し証明したものが株券です。株券は明治初期の頃から発行されるようになり、株券には以下の内容を記載するよう、会社法で定められています。
- 株券発行会社の商号
- 当該株券に係る株式の数
- 譲渡による当該株券に係る株式の取得について株式会社の承認を要することを定めたときは、その旨
- 種類株式発行会社は、当該株券に係る株式の種類とその内容
株主の氏名や株券を発行した日付、法人を設立した日付の記載はなくても有効です。
株券発行会社とは
株券発行会社とは、株券を発行する株式会社のことです。
平成18年5月1日以前は株券発行会社が主流でしたが、現在では定款・登記で株券発行会社の定めがない限り、株券不発行会社が原則です。
つまり、定款で株券発行会社とすることを定め、登記した株式会社が株券発行会社となります。
株券発行・不発行の主な流れ | |
---|---|
平成18年5月1日以前 | 株券発行が原則 →登記簿や定款に株券の記載がない場合、株券発行会社 |
平成18年5月1日以降 ※会社法施行 | 株券不発行が原則 →登記簿や定款に株券の記載がない場合、株券不発行会社 |
株券不発行会社とは
株券不発行会社とは、株券を発行しない株式会社のことです。現在は多くの株式会社が株券不発行会社です。
株券不発行会社は株券の発行や、紛失した場合の対処が必要ない、株式譲渡が煩わしくないなど、手間やコストが発行会社に比べ少ないというメリットがあります。
また、株券発行会社から不発行会社に移行(変更)する方法もあります。この場合は株券廃止の手続きをとります。
株券発行会社と不発行会社の違い
株券発行会社 | 株券不発行会社 | |
---|---|---|
定款への記載 | ◯ | ✕ |
株券の発行 | ◯ | ✕ |
株式譲渡時の株券の有無 | ◯ | ✕ |
株券紛失時の対応 | ◯ | ✕ |
株券発行会社と不発行会社の主な違いを今一度確認しておきましょう。
現行の会社法では、株券不発行会社が原則であるため、発行会社としたい場合は定款で定め、登記する必要があります。
また、発行会社は株券の発行が必要とされ、株式譲渡する際はこの株券がないと譲渡できません。不発行会社は、譲渡時に株券は必要ありません。
そして、株券を紛失すると株券喪失登録制度という、株券を再発行する手続きが必要となります。
このように、発行会社は株券の発行や紛失時は対応が必要となりますが、不発行会社はその必要がありません。
M&Aや事業承継をお考えの際、株券の扱いが不安という方は
M&A・事業承継のスペシャリストであるLIGARE(リガーレ)へお気軽にご相談ください。
株券発行会社か不発行会社の調べ方
平成18年5月1日以降に設立された会社は、原則株券不発行会社です。しかし、あえて株券発行会社にしていたり、歴史が長い会社では株券発行会社であるケースもあります。
株券発行会社か否かは簡単に調べることができます。それが、登記簿謄本の取得です。
法務局等で登記簿謄本を確認し、登記簿に「株券を発行する」旨の記載があれば株券発行会社となります。
登記簿は法務局に出向いて取得する方法と、インターネットから取得する方法があります。
株券発行会社がM&A・事業承継する際の注意点
株券発行会社がM&Aや事業承継をする際は、株券を発行しているからこそ、株券が紛失されていないか、未発行状態の株券がないかなど確認が必要です。
紛失した株券は再発行する
株券発行会社がM&Aや事業承継を検討している場合、株券が紛失されていないか確認しましょう。株券を紛失していると譲渡ができないため、紛失している状態を解消する必要があります。
紛失した場合は、株券喪失登録制度を利用し株券を再発行しますが、手続きに時間がかかります。
株券喪失登録制度とは、喪失した株を株券喪失登録し、登録から1年が経過したら株券が無効となるため、株券を再発行できる制度です。
不発行状態を解消する
旧商法では株券発行会社が原則だったため、古くからある株式会社は株券発行会社であるものの、株券を発行していないケースがあります。
例えば、株主から株券を所持しない旨の連絡があると株券発行会社は株券を発行しないケースもあり、そのことから株券が不発行という状態もあります。
しかし、M&Aや事業承継のため株式譲渡を行うにはこの株券の不発行状態の解消をできるかぎり行う必要があります。買い手や承継者の不安を減らし、譲渡後の法務トラブルを減らすためです。
そのため、不発行の株券を発行すればよいのですが、権利関係を確定させるなど発行までに時間がかかると、M&Aや事業承継のタイミングを逃してしまう可能性もあります。
その場合、株券発行会社から不発行会社に定款変更することで、株券の紛失や不発行状態を解消する方法もあります。詳しくは専門家への相談をおすすめします。
株券不発行会社がM&A・事業承継で有利な理由
株券発行会社はM&Aや事業承継時に株券がネックになることがありますが、株券不発行会社は発行会社に比べM&Aや事業承継に有利なポイントがあります。その理由をいくつかご紹介します。
株式譲渡で株券が不要
株券発行会社の株式を譲渡する際、譲渡には株券が必要となります。一方、不発行会社は株券がありませんので、発行会社と異なり譲渡時に株券を揃える必要がありません。
発行会社では株券を揃えるのに時間がかかることがありますが、不発行会社はその心配がありません。
法人版事業承継税制の手続きがスムーズ
事業承継において注意すべきポイントのひとつに贈与税や相続税があります。
高額な贈与税や相続税が発生すると会社経営にも影響が出ることがありますが、法人版事業承継税制の適用を受けると納税を猶予できます。
- 事業承継税制とは…会社等の後継者が取得した資産(株式など)の贈与税・相続税の納税を猶予する制度
しかし、この制度を利用するには担保提供が必要となり、株券発行会社が株券を提供するとなると、法務局に供託し、税務署にも供託書の正本を提出するなど手間がかかります。
一方、株券不発行会社は税務署に承諾書を提出するというスムーズな手続きです。
法人版事業承継税制の担保提供において、株券不発行会社の方にメリットがあります。
認定承継会社の非上場株式を担保提供する主な手続き | |
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株券発行会社 | 1.法務局に株券を供託する 2.供託書正本を税務署に提出 |
株券不発行会社 | 1.税務署に「認定承継会社の非上場株式に税務署長が質権を設定することについて承諾した旨を記載した書類」を提出 |
※※事業承継税制の適用を受けるには様々な条件があります。詳しくは専門家や行政機関にご確認ください。
株券不発行会社でスムーズなM&A・事業承継が可能
株式会社は株券を発行する会社と発行しない会社に分かれますが、株券発行会社は株券の紛失や不発行状態があると、M&Aや事業承継に影響を与えかねません。
その一方、不発行会社はその点の心配がないため、株券発行会社に比べスムーズなM&Aや事業承継が可能です。 M&Aや事業承継をお考えの際、株券の扱いが不安という方はぜひLIGARE(リガーレ)へご相談ください。M&A・事業承継のスペシャリストが真摯に、丁寧に対応いたします。