名義株とは?生じる3つの主な原因+解決方法を解説します
一般的に法人には、株主名簿が必要です。これには法人に対して資金を払い込んでいる出資者の情報が記載されているため、会社の株主が誰であるかを総覧することが可能です。
しかしこの株主名簿に記載されている人物と、実際に会社に対し資金を払い込んでいる出資者が異なるといった状況が実務上出てくるケースもあります。
そういった株のことを「名義株」と言います。
これは放置していると非常に危険で、場合によっては相続が絡むなど問題が複雑化するケースもあります。
そこでここでは名義株とは?について解説するとともに、名義株が生じる三つの主な原因と解決方法について解説していきます。
名義株とは
まず名義株について解説いたします。そして名義株が生じる原因や調べ方などについても解説していきます。
株主名簿の株主と実際の株主が異なる株
名義株は端的に言ってしまえば、株主名簿の株主と実際の株主、つまり出資者が異なる株のことを言います。
例えば株主名簿に記載されているのはAさんですが、実際に会社に対して出資を行っているのはAさんの弟のBさんだった、という場合、名義株が発生していると言えます。
最近の法人ではさほど多く見られるものではありません。しかし古い法人の場合、こういったことが往々にして起こり得るのです。
なお、名義株においてそれぞれの呼び方や内容・株主名簿の記載に関する関係性については以下の表にまとめました。
呼び方 | 内容 | 真の株主 | 株主名簿への記載 |
---|---|---|---|
名義貸与者 名義人 | 名義を貸した人 | ✕ 真の株主ではない | ◯ 記載されている |
名義借用者 | 名義を借りた人 | ◯ 真の株主 | ✕ 記載されていない |
名義株の調べ方
名義株かどうかを調べるには、まず株主名簿を確認しましょう。
株主名簿の確認が容易でない場合、または適切でないと考えられる場合には法人税申告書別表2に記載されている株主の名義を確認し、間違いなく株主として実効性のある人物かどうかを確認する方法があります。
その他、株主の名義を見ても社内のスタッフや従業員が真の株主であるかどうか判断がつかないというケースも、古い会社の場合も往々にしてあります。
こういった場合は創業者や創業者に近い人物に確認を取るという方法もあるでしょう。ただしこの方法は創業者が存命のうちにのみ実効性を持つ方法でもあります。
名義株が生じる原因
それではなぜ名義株が生じるのでしょう。一般的には以下の三つの可能性が考えられます。
1.相続税対策として名義株が発生
会社の株主が将来、子供やその他相続を受けるべき人に自身が持つ株を相続させる場合もあるでしょう。
この場合、会社の価値が高ければ高いほど相応の相続税が発生する可能性があります。
この相続税の課税を回避する目的において、最初から株主名簿に記載される株主は子供や相続を受けるべき人にしておき、実際の資金の払い込みや出資については別の人物が行うというケースがあります。
2.真の株主に破産歴あり・または欠格事由がある場合
一般的には株主又は株主を兼務する経営陣に破産歴や欠格事由に該当するような経歴がある場合、これを表に出すことを忌避しようとする動きがあります。
また会社法第331条でも定められているように、過去一定期間の間に賞罰歴のうち「罰」の歴があると取締役としての欠格事由に該当し、経営に参画したり出資を行うことができないケースもあります。
そういった場合に諸般の事情を考慮し別人を株主として株主名簿に記載するケースがあります。このようなケースもまた名義株が生じる原因の一つとして数えられます。
3.平成2年の商法改正前に発起人を集めていた場合
今から30数年前の1990年(平成2年)、商法が改正されました。この商法改正前は株式会社の設立に際して、最低でも7名以上の発起人が必要でした。
この発起人の規制をクリアするため、会社設立において親戚や知人などから名義を集めて株主として登記したケースも少なくありませんでした。
この時の名義人集めや株主名簿への記載が現在まで残っており、結果的に名義株が発生しているケースもあります。
名義株がM&A・事業承継に与える影響
名義株は、相続時に実質的株主と相続人がトラブルになるなどリスクがあります。実はM&Aや事業承継においても、名義株はトラブルの原因になりえるものです。
ここでは、名義株がM&Aや事業承継にどのような影響を与える可能性があるか紹介いたします。
事業承継できないおそれ
名義株の場合は後継者に株式の譲渡をもって事業承継を企図したとしても、株主名簿に記載されている名義が実際の株主本人のものでない場合、そもそも株を引き継ぐ事が難しくなります。
そうなると、株式の譲渡ができず、事業承継できないおそれがあります。
M&A失敗のおそれ
M&Aを予定している場合、名義株は大きなネックになる可能性があります。というのも買い手側からすれば名義株が発生していることはすなわち「株主が誰なのかはっきりしない」ということになります。
また先ほど解説した通り名義株の発生要因の一つには取締役や経営陣・出資者の過去の履歴や様々な欠格事由が影響しているケースもあります。
こういった要素を勘案するとデュー・デリジェンス(※)でよい調査結果にならず、買い手側に不安が残り、M&Aが失敗に終わる可能性もあります。
※企業買収や投資を行う際、投資を行う側が相手方の価値やリスク・その他様々な情報を調査・精査すること。デューデリとも。
名義株の解決方法
名義株を解決するための具体的な方法について解説いたします。
株主名簿を変更・書き換える
最もシンプルな方法です。双方で同意が取れれば株主名簿を正しいものに書き換える方法があります。専門家が介入・立会いのもとで確認書を取得すると良いでしょう。
また同意がない場合には訴訟を起こした上で判決の力を持って書き換えを行うという方法もあります。
ただしこの方法は当事者双方のどちらかがすでに故人となっている場合、実行不能なリスクがあります。
所在不明株主の株式売却制度を利用する
名義人と連絡が取れない場合には所在不明株主の株式を売却制度を利用して株を買い取ってしまうという方法があります。これは強制力を持つ方法のため、確実性の高い方法でもあります。
条件としては5年間以上を株主総会の招集通知などが到達できない株主であることが求められます。年1回以上の開催を5年間連続して行なったうえでこの制度を利用します。
専門家に相談する
専門家にご相談いただきスムーズな問題解決を図った方が良いケースもあります。
名義株の解消に骨が折れることもあり、多くの実務経験やノウハウを持った専門家への相談で問題が解決しやすくなります。
相続やその他の問題が複合的に絡み合っているケースもあるなど、蓋を開けてみれば問題が複雑ということも考えられます。
名義株を解消しスムーズなM&A・事業承継を
今回は名義株について解説してきました。
株式の真の帰属先は一体誰なのか、株主を正確に把握できないとなると、M&Aや事業承継の妨げとなる可能性があります。M&Aや事業承継をお考えの際は、名義株問題の解消も対処が必要といって良いでしょう。
問題が長引く可能性もあるので、なるべく早い着手が求められます。
なおM&A・事業承継に付随する課題解決のご相談も、LIGARE(リガーレ)へお任せください。今回ご紹介した以外にも名義株は様々な対処法がありますので、詳細はご相談ください。