相続人に対する株式の売り渡し請求とは?相続クーデターにも注意を

相続人に対する株式の売り渡し請求とは?相続クーデターにも注意を

会社法では、会社の株式を相続した相続人に対し、その株式を会社に売り戻すよう請求することができます。

ここでは、相続人に対する株式の売り渡し請求の説明とともに、請求の流れ、相続クーデターを始めとする注意点について解説していきます。

相続人に対する株式の売渡請求とは

相続人に対する株式の売渡請求とは、相続など株式を一般承継した株主に対し、株式を会社に売り渡すよう請求できる権利のことです。

例えば、会社の株主であった人物Aさんは長年、会社に対して深い理解と愛情を持って接してくれていたとします。 にもかかわらず、Aさんが亡くなった際、相続した人物が社会的、または会社にとって付き合いを継続することが必ずしも好ましいわけではないという場合は、株式の売渡請求を行うかどうかの判断を行うべきタイミングです。

この場合、相続人に対する株式売渡請求を行うことで、好ましくない・歓迎されるべきでない人物に自社の株式が相続されることを防ぐことが可能です。

なお、定款に「相続人に対する株式売渡請求ができること」を定めることで、こちらの売渡請求は有効なものとして扱われます。

相続人に対する株式の売渡請求の流れ

それではここからは相続人に対する株式売渡請求の流れを具体的にご紹介していきます。

なお前提条件として、その株式が譲渡制限株式であることなど、会社として株式の売渡請求を行うことができるような定款がすでに整備されているものとします。

ステップ1.株主総会における特別決議

まずは定款に定めのある通り、株式の売渡請求を行うことを会社として特別決議する必要があります。

この特別決議の内容で定めるべきは、売渡請求を行う相手方の氏名又は名称、そして実際に売り渡しを請求する株式の数となります。(※会社法175条1項による)

また、売渡の請求対象となる一般承継人(分かりやすく先ほどの例えを利用するならAさんの相続人)は、「売渡請求を行う相手やその株式の数を議決する株主総会決議」において議決権を持つことはできません。

ステップ2. 売渡請求の通知を行う

特別決議において売渡請求をする株式の数及び相手方が特定できた段階で、今度は実際に相手方に対して保有している(つまり相続した)株式を会社に売り渡すよう請求することになります。この流れは会社法第176条に定めがあります。

なおこの売渡請求については価額、つまりどの金額で株式を売り渡すことになるかという部分を除いて、売渡請求を受けた側(相続人)は「売渡請求そのものは拒絶できない」という強力な規定があります。

よって一般的に焦点となり得るのは、売渡請求を行う際の株式の価額となります。

ステップ3.売買価額の決定

続いてのステップで、売渡請求を行う際の実際の売買価額を一般承継人、つまり相続人と話し合って決めることになります。

この話し合いを協議といい、この協議が整わず交渉が成立しない場合には、裁判所に対して売買価額を決定してくれるよう申し立ても可能です(会社法第177条1項・2項)。

相続人に対する株式の売渡請求の注意点

続いて、相続人に対する株式売渡請求における注意すべきポイントをご紹介していきます。

注意点1. 株式の売渡請求は相続があったことを知った日から1年以内に行う

一般的に、株主の方がお亡くなりになると、一般承継といって故人の権利や義務を相続人が包括して承継します。

この一般承継(相続)があったことを知った日から起算して1年以内に株式の売渡請求を行う必要があります。

もっとも、株式の売渡請求を行う前に特別決議を行う必要がありますから、1年という期限ぎりぎりに請求しようとすると、売渡請求そのものが成立しなくなる恐れもあります。

一般承継(相続)の事実を知ったら、可能な限り早い段階で手続きを行うようにしたいところです。

注意点2.相続クーデター

いわゆる一族企業など、ファミリービジネス企業では相続クーデターも注意しなければいけません。

売渡請求を逆手に取る形で、会社の乗っ取りを企てられてしまう可能性があるためです。

相続クーデターとは簡単に言えば、以下のような事例が当てはまります:

<相続クーデターの例>

例えば、株主が以下の割合で株式を保有していたとき、創業者の代表取締役Aさんがお亡くなりになったとします。

創業者の代表取締役A:70%

創業者の息子であり唯一の相続人B男: 10%

取締役C:10%

取締役D:10%

このような構成において、代表取締役Aが突然亡くなった場合、創業者の息子B男が会社を継ぐとします。

しかし、取締役C、Dが結託し突如として臨時株主総会を招集し、相続人B男に対して株式の売渡請求を行うケースも想定されます。

株式の売渡請求は拒否できないものであり、B男は会社の跡継ぎの座を追われることになります。

これが相続クーデターのわかりやすい例です。

相続クーデターも念頭に置きながら相続人に対する株式の売渡請求の対策を行う必要があります。

まとめ

今回は相続人に対する株式の売渡請求に関してご紹介してきました。

相続人に対する株式の売渡請求は法的整合性、手続きの複雑性、税金面、相続クーデターなどさまざまな側面を考慮しながら行う必要があり、慎重な検討及び情報収集が肝となります。

手続きミスなどトラブルを回避するためにも、事業承継やM&Aをお考えの際は一度専門家にご相談いただくと安心です。

  • 中小企業M&Aのプロに相談したい!
  • 自社がいくらで売れるのか知りたい!
  • デューデリジェンスについて相談したい!
  • 会計や相続対策をスムーズにしたい!

中小企業のM&Aに関するお悩みすべて解決!
買収・売却問わずワンストップでサポート!
中小企業ならではのお悩みに寄り添います!

税理士法人発、M&Aのプロが
あらゆるケースに対応します。

WEBからの無料相談はこちら

TEL06-6205-8962平日9時〜18時