赤字会社でも売却できるの?注意点を専門家が徹底解説!

新型コロナウイルスの大流行により、多くの中小企業が政府の特別融資制度に救いを求めました。

しかしながら、その返済が徐々に進む中、物価の高騰、深刻な人手不足、そして働き方改革などが経営者にさらなるプレッシャーをかけています。

これらの要因は経営環境を一層厳しくし、多くの企業を経済的な岐路に立たせています。

赤字会社でも売却できる可能性はある!

このような厳しい経営環境のもと、赤字に窮してしまった会社でも、M&Aで会社を譲渡することはできます。

ただし、いくつかの注意点があり、今回はそれについて解説していきたいと思います。

赤字会社の定義

そもそも赤字会社とは、財務上の損益計算において、利益がマイナスの状態の会社をいいます。

営業利益が赤字:企業の主要な事業活動から得られる収益が、その事業活動を行うための費用より少ない状況。

経常利益が赤字:営業利益に加え、その他の収益(投資収益など)と費用(金融費用など)を含めた全体の利益がマイナスの状況。

当期純利益(純損失)が赤字: 会社の最終的な利益、すなわち税金、特別損失、特別利益を含めた後の純利益がマイナスである状況。

赤字の状態は、会社が財政的に健全でないことを示し、その原因は多岐にわたる可能性があります。

企業としてはこれを黒字に転換するために、コスト削減、事業の再構築、新たな収益源の開拓などの対策を取る必要があります。

赤字会社を売却する方法

赤字会社を売却手法として、今回は特に株式譲渡と事業譲渡について解説します。

株式譲渡

株式譲渡とは、企業の株式の所有権が一方の株主(譲渡人)から他方の個人や企業(譲受人)へ移転されるプロセスです。

中小企業のM&Aにおいて、主に用いられる手法です。

赤字会社の場合、負債が過大になっているケースが多く、黒字企業と比べれば株式譲渡対価を求めることは難しくなる傾向にあります。

しかしながら、会社の所有権ごと譲受人に譲渡することになるため、負債もそのまま引き継げるというメリットを享受できます。

事業譲渡

事業譲渡とは、企業が行っている事業の一部または全部を、他の企業や個人に移転する行為を指します。

この移転には、該当する事業に関連する資産、権利、負債、人員などが含まれ、売手企業は譲渡対価を買手から受け取ることが一般的です。

特定の事業や資産を直接別の企業や個人に移転する方法であり、特定の事業のみを売却する際に適した手法です。

赤字会社においては、譲渡対価を既存借入金の返済に充当する場合が多いため、譲渡希望金額は慎重に設定する必要があります。

詳しくは、別の記事で解説しておりますので下記記事をご参照ください。

赤字会社を売却する際の注意点

このような赤字会社を譲渡する際のポイントとして、以下3点に絞って解説します。

  1. 赤字要因の分析と黒字化戦略
  2. 自社の強みを理解する
  3. 赤字会社を売却する本当の価値を理解する

(1)赤字要因の分析と黒字化戦略

赤字要因の分析をし、黒字化に向けた具体的な戦略を立案することです。

併せて、事業計画書や経営改善計画書などを用いてスケジュールに落とし込むことは、赤字会社の売却をスムーズに進めるための有効な手段です。

売上高の減少要因

売上高が減少した場合は、この要因を細分化して理解しておく必要があります。

例えば、

  • 消費者嗜好の多様化に伴う需要の変化
  • 社会情勢に起因した、販売先やエンドユーザーの需要の変化
  • 競合他社の参入、自社製品の陳腐化、価格競争によるシェアの低下
  • 代替品の登場によるマーケットの縮小
  • 材料不足や人手不足でサプライチェーンの問題が影響し生産量が低下
  • 規制や法律の変更

などです。

加えて、この減収要因が恒常的なものか一時的なものなのか、また自助努力でどこまで改善できるのかも把握しておくことが必要です。  

費用の分析

変動費や固定費の分析を行い、不必要な費用を削減することが必要です。

また、費用項目の一つ一つを細分化して原因究明をしておくことが重要です。

変動費

  • 材料費が高騰しているが販売価格に転嫁できていない
  • 在庫水準が高い
  • 外注費の水準が高すぎる
  • 物流費が高止まりしている
  • 広告宣伝費が過剰、効果が低い

固定費

  • 生産効率が悪く、人件費や人材派遣費が過剰
  • 過大な役員報酬や給与水準が高い
  • 使途不明な接待交際費、会議費、支払手数料等がある
  • 金融機関借入が多いまたは金利水準が高く、支払利息の負担が大きい

などが考えられ、費用圧縮に向けて仕入先や外注先等と交渉を進めていくことが求められます。

また、事業縮小や撤退、大がかりなリストラの断行も余儀なくされることがあります。  

資金繰りの管理

黒字倒産という言葉があるように、損益計算書上は黒字でも資金繰りが間に合わず、倒産する会社があります。

ましてや赤字企業では、手元現預金が目減りしていく状況のため、負債は増加する傾向にあり、資金繰りの管理がより重要になってきます。

黒字化までに時間を要する場合は、新規投資の抑制や、借入金の返済が進まない状況にあります。

そのため、債務超過に陥ってしまうことや、金融機関及び再生ファンド等からの支援を要請せざるを得ない場合があります。

一部拠点の縮小や集約、遊休資産の売却等によって現預金を捻出せねばならないこともあります。

(2)自社の強みを理解する

赤字会社を売却する際、財務的な課題は避けて通れない事実ではあります。

一方で、企業の魅力や強みは多岐にわたり、決して財務諸表に表れているとも限りません。

販路

特定の取引口座や顧客基盤が強みになることがあります。

加えて、BtoB,BtoC問わず、取引先数の多さもその強みの一つになり得ます。

これは買収する企業にとっては、クロスセリングを通じて新しい市場機会に繋がるためです。

従業員

従業員が持っているスキル、資格、ノウハウ、技術力、ネットワーク等が強みになることがあります。

業種によっては従業員の年齢も、この魅力を左右してきます。

また、キーマンの存在も重要です。買収する企業によっては、このキーマンが継続勤務してくれるか、M&A後も協力的かどうかによって、他従業員のハレーションを低減する効果を期待します。

技術力

自社で保有している技術力が強みになることがあります。

但し、市場に必要とされている技術であれば赤字に陥っていない可能性があるため、しっかりと見定める必要があります。

許認可や免許

特定の製品や商品を扱うために必要な許認可や免許そのものが、買収する企業にとって魅力になることがあります。

例えば、食品、医療、薬品、化学品、建設、輸出入、酒類、金融等が挙げられます。

また、中には新規での取得が難しいものもあり、それを目的に買収を検討する企業も存在します。

以上、代表的なものを挙げましたが、実際は買収する企業それぞれで魅力に思うポイントも異なってきます。

そのため、赤字会社であってもPRポイントを洗い出しておくことと、相性のいい買手候補企業とのマッチングは、専門家にも相談されることをおすすめします。

(3)赤字会社を売却する本当の価値を理解する

赤字会社を譲渡することは、売主にとって、経済的な利益を超えた大きな価値を提供します。

経営責任からの解放

赤字会社の売主が直面する最大の課題は、重い経営責任です。

会社を譲渡することによって、この責任から解放されます。

これは、個人的なストレスの軽減だけでなく、経営上の決断からの自由をもたらします。

個人生活の充実

経営からの離脱は、個人的な生活の充実にも繋がります。

趣味や家族との時間、あるいは新たな事業への挑戦など、自分自身にとって意義深い活動に時間を費やすことが可能になります。

事業の継続と社会的貢献

M&Aを通じて事業が継続されることは、社会的な迷惑をかけずに済むという大きなメリットがあります。

従業員の雇用が維持され、顧客や取引先、金融機関などのステークホルダーに対しても、今まで以上の経済活動の提供が期待できます。

これは、オーナー社長としての社会的な責任を果たすことに他なりません。

まとめ

今回は赤字会社を売却する際の注意点を記載しました。

赤字会社だからと言って、決して売却できないわけではありません。

そのために、しっかりと赤字要因を分析し、黒字化戦略を練ることが重要になってきます。

また、M&Aにおいて財務内容は重要な要素の一つではありますが、財務諸表には表れていない自社の魅力や強みを明確にしておくことも、赤字会社のM&Aを成功させるポイントになります。

売主にとって赤字会社を売却することは、経済的な利益を越えた価値があります。

経営責任からの解放、個人生活の充実、およびステークホルダーへの迷惑回避という非金銭的な価値です。

その本当の価値を理解しつつ、専門家の協力を受けながらM&Aを進めることが肝要と言えます。

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