M&Aにおけるカーブアウトとは?ポイントやメリットを専門家が徹底解説!

社会情勢、政治、経済環境等の影響、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック等、昨今の経営環境は劇的に変化しています。

そのような中、柔軟且つ効率的な経営が必要とされてきており、カーブアウトが注目されています。

今回はこのカーブアウトについて、解説いたします。

カーブアウトとは?

カーブアウトとは、企業における子会社または一部事業を切り離すことを言います。

M&Aにおいては、複数事業を展開している会社が、コア事業とのシナジー(相乗効果)が発揮されていないノンコア事業を切り離すことを指す場合が多いです。

資本関係の変更に応じて更なる成長可能性を模索できる他、後述するような様々なメリットがあります。

スピンオフとスピンアウトとの違いは?

カーブアウトと似た言葉として、スピンオフやスピンアウトがあります。

いずれも事業を外部に切り離すことから、カーブアウトの一種と言えます。

スピンオフは、元の企業との資本関係を維持したまま独立させる手法のことを指し、採算の明確化や経営の柔軟性を高めることによるモチベーションの向上を目的とすることが多いです。

一方でスピンアウトとは、元の企業との資本関係を解消し、独立させる手法のことを指します。

M&Aにおけるカーブアウトは、このスピンアウトが一般的であり、切り離した事業または子会社を第三者に売却することによって、経営のスリム化を図ることができます。

これは、上場企業のみならず、中堅・中小企業でも広く行われています。

カーブアウトの手法とは

カーブアウトの手法としては、主に下記3つが挙げられます。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社が事業の全部または重要な一部を他の会社に譲渡する行為を指します。

事業譲渡によるカーブアウトは、譲渡対象事業を社内の一部門として運営している場合などに活用されます。

資産や負債を個別に指定し売買をするため、会社に内包している潜在リスクを排除しやすい反面、取引先や従業員との契約、行政と許認可再取得に向けた交渉等、手続きが煩雑になりやすいことがあります。

会社分割

会社分割とは、譲渡対象事業に帰属している資産や負債を別会社化して切り出し、別会社を売却する手法です。

資産や負債のみならず、契約関係や許認可など、会社がもつ権利や義務を包括的に承継することが可能です。

但し、分割スキームによっては税額が大きく変わってきますので、最適なスキームは専門家と相談の上で検討することをおすすめします。

株式譲渡

株式譲渡とは、既存の株主が自ら保有する譲渡対象会社の株式を他の企業や個人に移転する行為を指します。

譲渡対象事業が子会社として別会社化している場合、この子会社株式を譲渡することによりカーブアウトが可能です。

その際に、株式譲渡代金は親会社にて収受するため、譲渡益が発生すれば法人税が課されることとなります。

(詳細は関連記事「会社売却にはどのような税金がかかるの? 最新の計算方法や税金対策を税理士が徹底解説」をご参照下さい。)

売手企業側のメリット

M&Aを活用したカーブアウトを通じて、売手企業側では主に以下3点のメリットがあります。

経営資源の選択と集中

ノンコアである事業売却や子会社売却を通じて、経営資源の選択と集中を可能にします。
具体的には、

  • マネジメントコストの軽減
  • 管理部門の業務負担軽減
  • 資金面や人材面をコア事業に集中


などが挙げられます。

また、売却金額によってはキャピタルゲインを享受でき、売却資金そのものをコア事業に投下することも可能です。

他にも、企業ブランドをよりシンプルかつクリアにすることができ、マネジメントの効率化や株主に対するPRに繋がることも望めます。

収益率の向上

収益率がコア事業よりもノンコア事業の方が低いあるいは赤字の場合、ノンコア事業をカーブアウトすることにより全社的な収益率の向上を実現できます。

企業価値の向上

株式価値算定については、関連記事「会社の売却価格・相場を知ろう!会社売却を進める前に必須の知識を徹底解説!」をご参照下さい。
上記のように収益率の低いノンコア事業をカーブアウトする場合、全社的な収益力向上は企業価値向上にも直結していきます。

また、類似企業比較法において、比較対象の上場企業等におけるEV/EBITDA倍率が、コア事業よりもノンコア事業(カーブアウト対象)の方が低い場合、ノンコア事業を切り離すことによって、全社の企業価値評価においては高い倍率を採用することができます。
さらに、今後コア事業に集中することを通じて、コングロマリットディスカウント*を回避できる可能性もあります。

*コングロマリットディスカウント:複数事業を展開しているもシナジーが乏しい場合、株式価値を割引く考え方)

買手企業側の注意点

一方で、買手企業側がカーブアウトにて対象事業の譲受けを検討する際、カーブアウト特有の注意点があります。

代表的なものを以下に記載します。

スタンドアローン・イシュー

スタンドアローン・イシューとは、譲渡対象企業または事業がカーブアウトにより独立することによって、影響が出る問題のことを指します。

買手企業としてはQ&Aやヒアリング、デューデリジェンス等において、スタンドアローン・イシューを洗い出す必要があります。

以下、具体例を記載します。

✓取引先:既存親会社やグループ会社との直接的な取引はないか。また、影響を間接的に受けて実現できている取引はないか。カーブアウト後は、従来通り継続されるのか、剥落してしまうのか。

✓製品(商品):カーブアウトすることで影響を受ける特許や許認可はないか。また、スキーム上スムーズに引き継げるものかどうか。

✓資金面:既存親会社からの金融支援に依拠している状況か。また、単独で外部金融機関から調達している場合は、既存親会社の信用力も含めて与信判断されていないか。譲渡後の調達余力に影響はないか。

✓人材面:マネジメント人材は既存親会社からの投与なのかプロパー社員なのか。役員報酬は親会社から支払っていないか。既存親会社が一部受け持っている機能や業務はないか。また、対象事業のキーマンならびに在籍している従業員にとって、本人のキャリアプランに影響を及ぼす可能性が高いため、離職の懸念はどの程度あるか。通勤場所を変更する必要性、新たなオフィス選定の必要はないか。

✓設備面:オフィスの賃貸借契約関係はどうなっているか。退去する場合のキャンセルコストは発生するか。OA機器、冷蔵庫やコーヒーメーカー等の取扱いをどうするか。
 
など、上記以外にも、案件毎に注意すべきポイントは大きいものから細部なものまで、多岐にわたります。

また、これらの不足する事項を買手企業側でどこまでカバーできるのかも同時に検討する必要があります。


損益・資産状況の実態把握

適正な株式価値及び事業価値を判断するため、また買収後のPMIをスムーズにスタートさせるためにも、対象事業の実態把握を事前に行うことは欠かせません。

しかしながら、上記スタンドアローン・イシューでも記載した通り、カーブアウト後の影響は多岐にわたるため、これらを全て数値面に置き換えて把握、且つ将来をシミュレーションすることは、膨大な労力を費やすことがあります。

そのためにも、買手企業内で各部門から選抜したプロジェクトチームの組成や、専門家の支援を受けることが効果的です。

真の譲渡理由の把握

なぜ譲渡対象事業の売却を検討しているのか、真の譲渡理由を確認することも、カーブアウト案件の買収を検討する際には重要になってきます。

表面的には、「今後の更なる成長が見込めないため」という理由が多いとは思いますが、この成長の阻害要因を買手企業側のリソース活用で排除できるものなのかをしっかりと確認することが肝要です。

例えば、大口取引先の剥落が決まっていないか、大量の退職予定者がいないか等の個社における要因に加え、法改正による規制を受けやすい商材か、競合含め代替商材に置き換わるリスクはどの程度か等、マーケット全体まで視野を広げた理解が必要です。

この成長の阻害要因を買手側のリソースだけで排除することが難しい場合、売手企業側にも継続支援してもらうよう、M&Aにおける交渉が発生してきます。

また、これはカーブアウト案件に限らずですが、財務/税務/法務/労務/ビジネス/技術/環境等の潜在リスクを抱えている可能性があり、デューデリジェンスやヒアリングを通じて、適切に実態把握を進めていくことをおすすめします。

まとめ

今回は、カーブアウトを取り上げました。

対象事業にとっては、新たな資本傘下に入ることによって、これまでにない成長が望める他、売手企業及び買手企業にとっても有効な手法と言えます。

但し、通常のM&Aとは異なって、カーブアウト特有の論点もあるため、専門家に相談の上、慎重に進めていくことをおすすめします。

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